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ミステリー Archive

ナンシー・ドルー「ファベルジェの卵」「戦線離脱」

アメリカで70年以上もロングセラーを続けるナンシー・ドルーの新シリーズがめでたく邦訳されたので興味津々でゲット!初期の56作品しか知らなかったので、ナンシーの現代っ子ぶりに驚くと共に、時代の変化に対応して今もなお書き続けられているシリーズの強さを垣間見たように思いました。

まず、変わらないのはヒロイン・ナンシーの基本的な性格。正義感が強くて大人顔負けの智恵と行動的で謎を解き、事件を解決に導く手腕です。そんなナンシーを取りまく親友のベスとジョージ。初期シリーズでは美少女とボーイッシュな親友という位置づけでしたが、新シリーズでは、ベスは車の修理に詳しく、ジョージはコンピュータに強いというサポート要素が付加されてます。そして、ナンシーには大学生のボーイフレンドが!!でも、食べることと読書が趣味の彼氏って、普通は彼女側の位置づけでしょ(笑)。

「ファベルジェの卵」はロシアのニコライ2世縁のイースターエッグにまつわる謎解きです。現場に居合わせた4人のフランス人の青年の家の事情など絡んだお話でした。行動力より推理力重視の展開です。同時進行で別の事件も発生していて、ふたつの事件を交差させながら解決に導いていきます。

「戦線離脱」は、チャリティーの自転車レースに出場することになったナンシー達にトラブル続出!最後には賞金まで盗まれてレースそのものに危機が訪れます。こちらはナンシーの行動力が余すところなく発揮されて事件が解決するので、颯爽とした展開が好きな人には好まれる内容だと思います。反面、ミステリー度は低いです。

初期シリーズも新シリーズにも共通しているのは、ミステリーでありながら、「殺人などの残酷なシーンがない」ことです。保守的だと言われるけれど、古きよき時代から続く勧善懲悪の児童書というジャンルを一貫して守ってきたことが、ロングセラーとして続いてきた理由ではないかと思いました。

43230666194323066627ナンシー・ドルーファベルジェの卵
ナンシー・ドルー戦線離脱
キャロリン・キーン 甘塩 コメコ 小林 淳子
金の星社 2007-03

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古時計の秘密

正義感が強く好奇心旺盛な少女ナンシーが、大人顔負けの活躍で事件を解決する「ナンシー・ドルー・シリーズ」が東京創元社から発売になりました。全巻揃えば40巻以上の大作ですが、果たしてどこまで出してくれるのかファンとしては先行きが気になるところです。というのも、以前フォア文庫で出た時も結局6巻止まりだったんですよね。古い作品なので現代にそぐわない部分があるのは確かだし、ITに裏打ちされた怪盗ものが人気シリーズになるご時世だから、ヒットする作品とは言い難いのも事実です。でも、学生探偵の走りとして読めば、今時の作品の原点を感じられるのではないかと思います。

ナンシーの行動力を培ってきたのは、弁護士である父親が非常に娘の行動に理解を示してくれたことが大きいです。例えば、ナンシーは自動車を運転しています。今でこそ18歳で運転免許を取るのは珍しいことではありませんが、当時のアメリカでもかなり画期的な設定でしょう。とにかくナンシーは高校生であってもガチガチの規則に縛られている現代とは比べものにならないくらい行動範囲が広いんです。キャラクター達が、自由闊達にのびのびしています。

シリーズの事件は、地元の遺産争いから、組織的な犯罪事件まで性質が幅広いので、全部が好きでなくても好みのエピソードがひとつやふたつはあるでしょう。私はトリックものより、組織的な犯罪に巻き込まれて解決していくパターンが好きです。敵の基地に潜入したり、警察と協力して犯人を捕らえたり、本格的な探偵も顔負けの活躍をしてくれるエピソードをもう一度是非読みたいので、そこに行き着くまでのシリーズを発行してもらいたいです。

4488250033古時計の秘密
キャロリン・キーン 渡辺 庸子
東京創元社 2007-11
ナンシ・ドルー18歳。金持ちの老人の遺産を、強欲な親戚一家がむりやり独り占めして、そのために、これまで老人に援助の手を差し伸べてもらっていた人々が困っているらしい。みんなに遺産がいきわたるようにすべく、ナンシーは隠された遺言書捜しに奔走する。正義感が強く好奇心旺盛なナンシーが、大人顔負けの活躍で事件を解決する。長年にわたり世界中の人々に愛されてきた、少女探偵ナンシー・ドルー・ミステリの記念すべき第一作!

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天使と悪魔

「ダ・ヴィンチ・コード」で一躍有名になったダン・ブラウンの作品です。時系列で言えば、こちらの方が「ダ・ヴィンチ・コード」より先になります。「ダ・ヴィンチ・コード」にはイマイチ食指が動かなくてこちらにしたんですが、やはりというか、予想どおり私の趣味にはさっぱり合わない作品でした。そもそも、文字を読んでも物語に変換されない。ひたすらに活字を追ってるだけですから、面白いとか感想を持つ以前の問題です。これまでにもたまーにあったんですよね。どんなに世間での評価が高かろうが、自分には受け止められない作品というのが。ここ数年選ぶことがなかったんですが、久々に掴んでしまった。

ハードカバーから文庫への発行がおそろしく早いことといい、世間での需要は高いですから、普通に「秋の読書になにがいいかな」とミステリー系を探している人は、もくじをめくって興味を持ったら買ってみる、と。文庫版なら二千円でおつりがきますからね。

40479145684047914576天使と悪魔(上)
天使と悪魔(下)
ダン ブラウン 越前 敏弥
角川書店 2003-10-31

霧の訪問者 薬師寺涼子の怪奇事件簿

ドラキュラも避けて通るといわれる「ドラ避けお涼」こと薬師寺涼子警視の事件簿は、夏の軽井沢を舞台に傍若無人な展開です。とはいえ、巻数が進むに連れ、スケールが小さくなっていっているように感じるのは気のせいでしょうか。毎回登場して泉田警部補を苦労させる怪物も今回は非常におとなしく、あっさり退治できてしまいましたし。そもそもアレをいつもと同列の怪物に分類していいものかどうか…。人外なものには違いないんだけど、他人に被害をまき散らしてないですからね。むしろ同情すべき哀れな被害者。もっとも、お涼サマに言わせれば、馬鹿な負け犬でしかないわけですが。

今回の一番の被害者は、いうまでもなく泉田警部補です。のっけから交通事故にあって軟禁されて、リシェンヌ達に救出してもらう始末。運悪く居合わせた室町警視にまで殴られてしまったし。再会したときのお涼サマ、とっても機嫌が悪うございました。こういうところはコミカルで好きなんですよね。だから見捨てられないんだなあ。

4061824996霧の訪問者 薬師寺涼子の怪奇事件簿
講談社ノベルス 田中 芳樹
講談社 2006-08-25
米国の美人富豪のパーティーに招待された警視庁一の傍若無人女王・薬師寺涼子警視、休暇を取って部下・泉田と軽井沢へ。ところが泉田拉致を皮切りにホテル焼失、富豪令嬢自殺、女装軍団集結と事件が続発、軽井沢は大混乱に!真相を探るべくお涼はお得意の攻撃と破壊の強引捜査を開始するが、行く手を身勝手富豪・マイラが阻む。ついに始まる日米“傍若無人”頂上決戦。

消えた巨人軍

西村京太郎と言えば、ダントツで十津川警部シリーズが人気なんでしょうが、私、なぜかそのシリーズは苦手でして、正直、西村作品は読んでません。ならば、主人公が違えばどうだろうか、と探してみたところ、左文字進シリーズがヒットしました。ハーフでアメリカ帰りの探偵と非常に古くさい設定ですが、もともと執筆された時期を考えれば、探偵ものとしてはごく普通の主人公です。あまりにオーソドックスすぎて、だからどうなの?って感じ。

事件のスケールは大きいです。巨人軍の監督と選手をまるごと誘拐してしまった犯人との知恵比べ。繋がらない糸を小さなほころびから寄り合わせていく展開でした。事件が大きい割には、犯人のスケールがショボイので、ラストがあっけなく感じます。その点、天藤真の「鈍い球音」はよくできてたなあ。どうやら事件のスケールが大きいより、犯人のスケールが大きい作品の方が私には面白いらしいです。

主人公の左文字は男性の好みとして外れますが、ひねくれた人物は嫌いじゃないので、このシリーズともう少し付き合ってみようと思います。一応、ヒロインもいるんだけど、こちらも私の好みから外れるんですよね。

<作品データ>
【タイトル】消えた巨人軍(ジャイアンツ)―左文字進探偵事務所
【作者】西村 京太郎
【出版】徳間書店 2000-05
【物語】ここに、ある人物が、三十人を超す屈強な若者の集団である巨人軍を誘拐することを考えた。果して、そんなことが可能かどうかを書いてみたのが本書であり、誘拐と捜査と、犯人追及のサスペンスを存分に味わって頂きたい(著者)。東京から大阪へ移動中の“ひかり号”から、選手全員が忽然と消えた!犯人の要求は五億円。私立探偵・左文字進が犯人の奸智に立ち向う、日本誘拐ミステリー史に輝く不朽の名作。

世紀末ロンドン・ラプソディ

ホームズファンには原作至上主義とサイドストーリーも好きな人とに別れているように思いますが、「世紀末ロンドン・ラプソディ」は、紛れもなく後者向きの作品です。

ベーカー街221Bにやってきた日本の女のコとホームズが難事件に挑戦。
本格パスティッシュ・ストーリー。第10回横溝正史賞優秀作。

霧のロンドンに相応しく、しっとりした雰囲気に物語が包まれています。もちろん、そこは横溝正史賞作品ですから、ハードな展開もあり。ハードというよりスピーディ、の方が近いかな。短い時間に凝縮されて事件が展開していくから。
「シャーロックホームズの事件簿」の中に出てくる有名な未解決事件がこの物語の背景になってるあたり、結構通好みだです。そもそもヒロインの森瑞希がホームズのファンだし(笑)H・G・ウエルズも登場するのでSF好きにも嬉しい展開あり。ともかくワトソンの手記と瑞希の論文が程良くミックスされてるウイスキーな作品です。


<作品データ>
【タイトル】世紀末ロンドン・ラプソディ―A Study in Violet
【作者】水城 嶺子 (著)
【出版】角川書店 ISBN:4048725882 (1990/06)

警視庁幽霊係

女子高生の守護霊つき独身刑事の捜査事件簿というキャッチコピーに惹かれて購入したのが天野頌子さんの「警視庁幽霊係」です。オカルトホラー色の強い作品を思っていたのですが、中身はごく普通の事件を扱った刑事物でした。

4396208081警視庁幽霊係
天野 頌子
祥伝社


主人公の柏木雅彦は、現場を回るうちに被害者の霊と話ができる能力が備わり、警視庁の特殊捜査室に所属している刑事である。彼の仕事は、現場に残っている霊から事情徴収して事件の解決に役立てることだ。科学で実証できようができまいが、現実に事件解決の役に立っている事実は曲げられないというわけで、柏木は非常に忙しい日々を送っている。キャッチコピーになっている女子高生の守護霊も、そんな中で知り合った霊のひとりであった。彼女の事件ももちろん入っているが、事件解決=成仏とはいかないようだ。

冒頭で柏木はひき逃げされた男の子の霊から事情徴収し、ひき逃げ犯の絞り込みに寄与している。次が老婦人の殺人事件だが、家族や参考人の話を突き詰めていくと、家族の絆が見えてきて霊が納得したところで事件解決。しかし、柏木の霊能力は、はっきり言って中途半端なため、非常に危なっかしいことが判明している。そこは、先輩刑事の友人で本物の霊能者・三谷が絶妙なタイミングで助けてくれているのだが、守銭奴という性格設定があり、きっちり有料というのが笑える。

霊能力絡みだが、扱っている事件に特別変わったものはない。三面記事の片隅に載るような平凡な事件だが、迷宮化する前に現場の霊と話をすることで犯人が絞り込まれている。決して柏木個人の捜査力や推理力が抜きんでているわけではなく、他の警察官の地道な捜査活動に絞り込みの情報を寄与するというものだ。そこが警察や探偵個人の能力による事件解決の手法を取っている他の作品との違いである。それをユーモラスな刑事物と捉えるか、物足りないと感じるかは個人の嗜好によるだろう。霊能者が出てくるから派手な作品を期待すると肩透かしを喰らうこと間違いない。ほのぼのとした人情もの好きには好感度の高い作品だと思う。

女子大生会計士の事件簿

世間一般の評価では、公認会計士はお金持ちでエリートというイメージが強いですが、その仕事の実態を知っている人がどのくらいいるかとなると、かなり疑問です。そんな謎めいた会計士の仕事を軽いミステリー仕立ての短編で著したのが「女子大生会計士の事件簿」です。主人公の萌実は、一見キャピキャピの女子大生ですが、実力は本物の公認会計士です。彼女とコンビを組むのが、ン度目かの試験でようやく会計士補になったカッキーこと柿本一麻29歳。ふたりの凸凹コンビが企業の会計監査に派遣され、会社を助けたり、会計の不正を追及していきます。会社の事務で会計を担当している人にはちょっと耳痛かったり、参考になったり、読み方も様々だと思います。

ミステリー仕立てとはいえ、使われているネタが会計の不正や問題点なので、本格的なミステリーのような緊迫感はありませんが、ほんのわずかな操作で何億円も違う結果が出るのでお金の不思議を実感できます。簿記検定を受ける人なら、見覚えのある言葉がズラリと並ぶことでしょう。巻末には用語解説もあるので、わからないところは読み飛ばしても大丈夫。

著者の公式サイトには、Web版「北アルプス絵葉書」事件が公開されていますので、それを一読すれば作品の雰囲気がつかめると思います。本格ミステリー以外はミステリーとは認めない方々には不評らしいので、会計について楽しく知りたい方でないとオススメできません。これからは営業マンでも会計を意識して仕事をする時代とも言われています。ビジネス知識の小箱に入れておきたい作品です。

<作品データ>
【タイトル】女子大生会計士の事件簿
【作者】山田真哉
【出版】新書版:英治出版1~4巻、文庫版:角川文庫1~3巻
これから買うなら文庫版がお勧めです。

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【物語】あなたのキャリアや資産の命運は、すべて会計が握っている!キュートな女子大生会計士・藤原萌実と入所一年目の新米会計士補・柿本一麻が監査の先々で出くわす奇妙な事件。粉飾会計、会社乗っ取り、クーポン詐欺などバラエティ豊かな謎を解くうち、会計の仕組み、そして経済の仕組みがみるみるわかる!

ホミサイド・コレクション

篠原美季さんといえば、「英国妖異譚」シリーズが有名で、今回の「Homicide Collection」もそれとリンクした話です。リンクしていると言っても全く別シリーズ(にしていいのか?)で単独作品として成り立ってます。

4062557975Homicide Collection ホミサイド・コレクション
(著)篠原 美季 (挿絵)加藤 知子
講談社

長身痩躯、精悍な顔立ちの係長御堂千祥、相棒で中世的な顔立ちの神原瑞季、帰国子女の豪徳寺カイ、霊感が強い安心院薫子、ベテランの大黒正道、元暴走族のヘッド小仏雄仁、服装も態度も崩れた異色の刑事集団「グループ・イレブン」。連続児童誘拐事件を捜査中、十年前のユウリ・フォーダム誘拐事件が浮上。あのユウリの従兄弟、幸徳井隆聖が事件解明の鍵を握る!?

御堂千祥と神原瑞季はその名前から「瑞祥コンビ」とあだ名されるお目出度い組み合わせです。他のメンバーも名前が身体を表すとおり、そういう容貌。個性的で実力のあるメンバーの取り合わせは、駒崎優さんの「クイーンズ・ガード」・シリーズを彷彿させられました。でも、グループ・イレブンは刑事集団。キャラは明るいけど、取り扱ってる事件は暗いです。

話の組み立ては計算されてるなあと感じました。冒頭の強盗事件から十年前の誘拐事件を引き出すところはうまい!でもね、解決策に幸徳井隆聖を絡ませるのは安直すぎです。「英国妖異譚」シリーズのファンは喜んだかも知れないけど、知らない読者には唐突すぎると思いました。もっともそれだからこそ児童誘拐殺人という陰湿な事件がどろどろ模様にならずにすんだのかも知れませんが。それまでテンポがよかったから、私としては幸徳井隆聖の登場はクエスチョン。ただし、いなければ本格ミステリになりそうで、それはそれで嫌かも。我が侭な読者ですみません。

暁天の星、無明の闇

面白いけどこれはかなり読者を選びそう。椹野道流さんの鬼籍通覧シリーズには思わず唸らされてしまいました。

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【タイトル】暁天の星 鬼籍通覧(1) 無明の闇 鬼籍通覧(2)
【著者】椹野 道流
【挿絵】山田 ユギ
【出版】講談社

法医学教室の朝は解剖で始まる。
「あっ、先生!いま、二つに切ってしもうたんが副腎ですわ」
「……こんなとこにあったっけ、副腎……」
法医学教室の新人・伊月崇の毎日は、目下、このように驚きと発見の連続なのである。
そんなある日、一人の女性の遺体が運ばれてきた。やがて現れ始めた奇怪な謎とは?ルーキー伊月が、心優しき刑事・筧と、伏野先輩と共に遭遇する、奇妙な事件の数々。

ひとことで言えば、法医学教室のオカルト・ファイル。解剖した遺体から迷宮入りの事件の謎が解けるエピソードが続きます。物言わぬ死体から死因を導き出すというわけです。ミステリーといえなくもないけど、刑事がいても警察物ではない。

好みがわかれるところは、ズバリ、死体の描写です。えぐい状態が生々しく表現されてるんですよ。著者の椹野道流さんは、この道の元プロだったそうで、描写が半端じゃないんです。下手なオカルトものより、ずっと怖いです。まさに夏向きの作品。ただ、その描写のえぐい生々しさゆえに普通のオカルトものとは違ったリアリティがあって、読み手の好みを問うだろうと思ったわけです。

そこをスルーできたら展開はしっかりしてるし、登場人物はユニークだし、話としては面白い。元小学校の同級生伊月と筧のコンビは妖しく楽しいです。関西弁で話してるので、どこかほのぼのしてるし、峰子さんはネコ語だし。法医学教室の頭脳集団、これで大丈夫?あと面白いと言えば、「間奏」と称して事件の間に食事シーンが設けられてること。たわいのないシーンなんですが、ほっこりさせられてキャラに対する愛着が湧きます。こういう心配りがニクイと思わせる作品です。

ちなみに、この鬼籍通覧シリーズは、先に新書版で5冊まで出ています。文庫まで待てない人は探してみるといいかも。内容に変化はありませんが、どちらにしても夜中に一人で読むのは避けた方がいい本です。

薬師寺涼子の怪奇事件簿 夜光曲

ドラよけお涼シリーズ最新刊。1年ぶりの新刊で期待していたのですが、フタを開けてみれば…。

薬師寺涼子の怪奇事件簿 夜光曲
田中芳樹(著)
垣野内成美(挿絵)
祥伝社 2005-02-09

今回の敵はタイトルと関連して、まず、蛍。もちろんこのシリーズに登場するからには普通の蛍ではありません。ズバリ、人食い蛍でございます。でも、これは小手先の敵。真打ちが出てくるのはずっと先です。それをいつもの面々が退治して、エンドマーク。

身もフタもない言い方ですが、今回は正直、がっかりの出来映えでした。今までの勢いはどうしちゃったの?お涼サマと泉田クンの侍従関係はいいとしても、室町警視とのやり取りに緊迫感はないし、唐突なヒントは出てくるし、場面ごとの繋がりにキレもなし。フランスから呼びつけたメイドを登場させたり、浴衣シーンを入れたりの読者サービスがことごとくハズレた感じです。

最悪なのは、特定の個人の描写がバレバレだってこと。中傷は、このシリーズに似合いません。明るくサラリとやり過ごしながらニヤリとできるのがよかったのに。

いたずらに登場人物を多くするよりも、お涼サマと泉田クンの活躍があって、室町警視のサポートが何気に色づけされるワンパターンで読ませて欲しいです。シリーズのファンとして、次作に期待します。

亜智一郎の恐慌

ミステリーが苦手でも時代小説もどきになると飽きずに読んでいける。泡坂妻夫さんの「亜智一郎の恐慌」は、ミステリーでありながら時代小説のツボを押さえた作品です。

亜智一郎の恐慌
泡坂妻夫
東京創元社
2004-01


時は幕末、泰平の世で腑抜けになったお庭番に代わり将軍を守る雲見番の頭、亜智一郎が同僚と活躍するミステリーものです。江戸時代にミステリーというのも何やら奇妙ですが、侍が刀を振り回す時代小説とは確かに違います。

事件は安政の大地震に始まり、将軍暗殺の攻防戦へと発展するのだけれど、そこに漂う雰囲気に陰湿さがありません。たぶん、雲見番というお役目としてのやり取りがそうさせているのでしょう。上司である阿波様との会話は噛み合ってるんだけど、微妙にずれてるんです。

大きな事件の中に飲み込まれて表に出てこない小さな変化を智一郎は実によく見ています。イマドキ風に言えばプロファイリング?優秀な探偵は物を見る力に優れていますが、智一郎もしっかりその才能を持っていますね。加えて色白の美男というのが、乙女心に嬉しい。場面を思い浮かべるのに主人公の外見は重要項目なのです。

雲見番の面々と歴史上の重要人物たちとの関わり合いをみながら事件を追うのも面白いです。また、天文に興味のある人なら、智一郎の本職である「雲見」に心惹かれると思います。

本書の他に、亜智一郎の子孫、亜愛一郎が活躍する短編集のシリーズが3冊あります。前段で事件が起こって、後段で雲のカメラマン亜愛一郎が謎を解説してくれるパターン。事件を解決するのとは少し違うところが目新しいのかな。短編ミステリーってこんなもん?と思いながら読みました。
亜愛一郎の狼狽
泡坂妻夫
東京創元社 1994-08


亜愛一郎の転倒
泡坂妻夫
東京創元社 1997-06


亜愛一郎の逃亡
泡坂妻夫
東京創元社 1997-07


泡坂妻夫さんは「DL2号機事件」(「亜愛一郎の狼狽」に収録)がデビュー作で、それが私の好みに合ったのか、一連のシリーズを読み進めていきました。本来ミステリーが苦手な私にしてはかなり珍しい展開です。人気作品である本格ミステリーはト書きを読んで自分の好み路線と外れていると感じたので、手を出していません。

千里眼の瞳

松岡圭祐著の「千里眼の眼」は、お馴染み千里眼シリーズの第5作。
催眠のファンには千里眼シリーズでひとくくりすると怒られそうですが。
物語が美由紀サイドと嵯峨サイド、ふたつの視点から進んでいくのはいつもどおりです。
でも、今回は個人の活躍より、その背景とは何かを考えさせられました。
巨大な組織の中で個を殺して働くサラリーマンの悲哀。なんか、身に詰まされるものがあります。
それでいて、最近の国際的事件がしっかり網羅されて美由紀の行動に幅を持たせてるのはさすがですね。
焦点はやはり拉致問題でしょうか。
対して嵯峨の等身大の行動。切り返しがすごくうまい。自然に読み進めます。
リアルな題材をフィクションに仕上げて希望を持たせてくれる展開です。
元気が出てくるというより、頑張らなくちゃと思ったエンディングでした。

4198614547千里眼の瞳
松岡 圭祐
徳間書店 2001-12

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