枕元に一冊 Archive
ナンシー・ドルー「ファベルジェの卵」「戦線離脱」
- 2008年3月17日
- 枕元に一冊
アメリカで70年以上もロングセラーを続けるナンシー・ドルーの新シリーズがめでたく邦訳されたので興味津々でゲット!初期の56作品しか知らなかったので、ナンシーの現代っ子ぶりに驚くと共に、時代の変化に対応して今もなお書き続けられているシリーズの強さを垣間見たように思いました。
まず、変わらないのはヒロイン・ナンシーの基本的な性格。正義感が強くて大人顔負けの智恵と行動的で謎を解き、事件を解決に導く手腕です。そんなナンシーを取りまく親友のベスとジョージ。初期シリーズでは美少女とボーイッシュな親友という位置づけでしたが、新シリーズでは、ベスは車の修理に詳しく、ジョージはコンピュータに強いというサポート要素が付加されてます。そして、ナンシーには大学生のボーイフレンドが!!でも、食べることと読書が趣味の彼氏って、普通は彼女側の位置づけでしょ(笑)。
「ファベルジェの卵」はロシアのニコライ2世縁のイースターエッグにまつわる謎解きです。現場に居合わせた4人のフランス人の青年の家の事情など絡んだお話でした。行動力より推理力重視の展開です。同時進行で別の事件も発生していて、ふたつの事件を交差させながら解決に導いていきます。
「戦線離脱」は、チャリティーの自転車レースに出場することになったナンシー達にトラブル続出!最後には賞金まで盗まれてレースそのものに危機が訪れます。こちらはナンシーの行動力が余すところなく発揮されて事件が解決するので、颯爽とした展開が好きな人には好まれる内容だと思います。反面、ミステリー度は低いです。
初期シリーズも新シリーズにも共通しているのは、ミステリーでありながら、「殺人などの残酷なシーンがない」ことです。保守的だと言われるけれど、古きよき時代から続く勧善懲悪の児童書というジャンルを一貫して守ってきたことが、ロングセラーとして続いてきた理由ではないかと思いました。
![]() | ![]() | ナンシー・ドルーファベルジェの卵 ナンシー・ドルー戦線離脱 キャロリン・キーン 甘塩 コメコ 小林 淳子 金の星社 2007-03 by G-Tools |
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卵の日
- 2008年3月 6日
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巨大な次空間に蝕まれ、今にも消滅しようとしていた世界で、わずかに残された人類は、もてる技術の全てを費やし、世界を守るために人工生命体「外人(がいと)」を作り上げます。数少ない外人の中でも更に少ない称号付きの守護者4人とただ一人の女性の「描き手」ヴァイスが出会ったところから物語が始まります。4人の守護者はいずれも曲者揃いですが、中でも能力未知数のアートルムは、ヴァイスにいわゆる一目惚れ状態で、能力を発揮したり暴走したり。気になるのは、リーダー格のオールとヴァイスとが同じ言葉を知っていることです。
生きることなんて、言うほど簡単じゃないけど、考えるほど難しくない
彼らの関係を含めてキーワードになりそうな言葉です。
エピソードは、ヴァイスが受けた依頼に4人が護衛するか、4人が受けた依頼にヴァイスがくっついて行くかで始まり、次生(魔物)と戦うシーンが結構派手。スプラッタ苦手な人には向かないかもしれません。でも、それを差し引いても会話が楽しいし、じっくり読ませてくれるのでストーリー重視派にはオススメです。
ヴァイスもただ守られているだけの存在ではなく、まず自分で身を守る術を心得てます。その上で、4人と接しているので、守護者の方がむしろ押され気味の感があります。おちゃらけているようで、命の重みをしっかり感じさせてくれる作品です。
昔、2巻まで出ていて、それもいいところで切れてた作品が新装版で出版されたものです。今度は是非、結末まで出して欲しいです。
![]() | 卵の日 直野 儚羅 リブレ出版 2008-03-01 ゼロコミック by G-Tools |
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古時計の秘密
- 2007年11月12日
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正義感が強く好奇心旺盛な少女ナンシーが、大人顔負けの活躍で事件を解決する「ナンシー・ドルー・シリーズ」が東京創元社から発売になりました。全巻揃えば40巻以上の大作ですが、果たしてどこまで出してくれるのかファンとしては先行きが気になるところです。というのも、以前フォア文庫で出た時も結局6巻止まりだったんですよね。古い作品なので現代にそぐわない部分があるのは確かだし、ITに裏打ちされた怪盗ものが人気シリーズになるご時世だから、ヒットする作品とは言い難いのも事実です。でも、学生探偵の走りとして読めば、今時の作品の原点を感じられるのではないかと思います。
ナンシーの行動力を培ってきたのは、弁護士である父親が非常に娘の行動に理解を示してくれたことが大きいです。例えば、ナンシーは自動車を運転しています。今でこそ18歳で運転免許を取るのは珍しいことではありませんが、当時のアメリカでもかなり画期的な設定でしょう。とにかくナンシーは高校生であってもガチガチの規則に縛られている現代とは比べものにならないくらい行動範囲が広いんです。キャラクター達が、自由闊達にのびのびしています。
シリーズの事件は、地元の遺産争いから、組織的な犯罪事件まで性質が幅広いので、全部が好きでなくても好みのエピソードがひとつやふたつはあるでしょう。私はトリックものより、組織的な犯罪に巻き込まれて解決していくパターンが好きです。敵の基地に潜入したり、警察と協力して犯人を捕らえたり、本格的な探偵も顔負けの活躍をしてくれるエピソードをもう一度是非読みたいので、そこに行き着くまでのシリーズを発行してもらいたいです。
![]() | 古時計の秘密 キャロリン・キーン 渡辺 庸子 東京創元社 2007-11 ナンシ・ドルー18歳。金持ちの老人の遺産を、強欲な親戚一家がむりやり独り占めして、そのために、これまで老人に援助の手を差し伸べてもらっていた人々が困っているらしい。みんなに遺産がいきわたるようにすべく、ナンシーは隠された遺言書捜しに奔走する。正義感が強く好奇心旺盛なナンシーが、大人顔負けの活躍で事件を解決する。長年にわたり世界中の人々に愛されてきた、少女探偵ナンシー・ドルー・ミステリの記念すべき第一作! by G-Tools |
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からだの自然治癒力をひきだす「基本のおかず」
- 2007年11月11日
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マクロビオテック関連の料理本です。難しい理論は置いておいて、食物を「陰」と「陽」に分け、そのバランスを取るような食事が紹介してあります。一例を挙げれば、揚げ物は「陽」で野菜サラダは「陰」。両方をバランスよく取ることで健康食になるというわけです。個別の食物についての陰陽の分類はあまりしてありませんが、四季を通しての食事バランスが紹介してありますので、旬の素材で感覚的にわかります。逆に言えば旬の素材を使えば、だいたいで陰陽のバランスを取った食事が作れると思います。
料理のカラー写真は最初の数ページだけなので、見た目はかなり地味です。しかし、体質に応じた出汁の使い方や野菜を丸ごと使う料理が多いので、私には作りやすい構成です。また、アレンジもしやすい。素材がコレでなければダメということもないので、あり合わせで作りやすいというのもポイント高し。お洒落な料理より、作りやすくて素朴な料理の本です。
![]() | からだの自然治癒力をひきだす「基本のおかず」―食事の陰陽バランスが健康へのカギ! 大森 一慧 サンマーク出版 2003-12 by G-Tools |
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彩雲国物語 隣の百合は白
- 2007年11月 3日
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二ヶ月ぶりの彩雲国物語の新刊は、本編ではなく外伝です。既に雑誌で掲載済みの「恋愛指南争奪戦!」と「お伽噺のはじまりは」+書き下ろし「地獄の沙汰も君次第」の取り合わせです。これまでもそうでしたが、雑誌掲載の2本もちょこちょこ手直しされているので初出時と読み比べると面白いかも。後付設定にあわせて修正してあります。
メインは、もちろん書き下ろしの秀麗の叔父・黎深メインのお話です。これまで名前だけの登場だった謎の女性、百合姫の全貌が明らかになります。「お伽噺のはじまりは」とペアで出されたのも納得。そして、なぜこの時期なのかも何となく理解できます。おそらく百合姫の存在が本編の伏線になるんじゃないかと。ただ、より理解するには雑誌掲載のみで文庫本未収録の「鈴蘭の咲く頃に」を読んでないと難しいかも。だって、いきなり「お手玉」ネタが出てくるんだもん。
それはさておき、天上天下唯我独尊な黎深のヨメになった百合姫は、よくできた女性です。紅家には我が侭な次男を支える三男坊がいますが、その彼をしても押さえられない黎深に必要とされるなんて、この上なく不幸な身の上と言えなくもないですが、百合姫はその人生を自分で選びました。その選び方もかなり黎深のワガママに振り回されてますが、自分の居場所を確認できる代償というところでしょうか。作中、一番気の毒なのは黄奇人です。彼の仮面の謎も判明します。全部、黎深が悪い!そして、それを黙認することになってしまった悠舜も罪は重いぞ~。
![]() | 彩雲国物語隣の百合は白 雪乃 紗衣 角川書店 2007-11-01 by G-Tools |
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暗号解読
- 2007年10月19日
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考古学が好きでロゼッタストーン関連の本なら何でも読みたい症候群に陥っていた時に手に取った1冊です。かのシャンポリオンがいかにしてロゼッタストーンを解読するヒントを得たか、それを少し違う角度から捉えていた内容でした。多くの古文解読解説本は、当然古文の解読にいたる過程や考え方が中心です。本書もそういった内容に触れられていますが、考古学的な見地ではなく、数学的要素を持った暗号解読法からの考察でした。
未開読文字を読み解くのと暗号を解読するのとは、考え方が非常に似ています。暗号は、いかに解読されないようにするか人為的に操作されているわけですが、失われた文字は意図せずして意味がわからなくなっている。方向性は違えど、解読するための苦労は同じです。
暗号といえば、スパイの暗躍する世界が一番に思い浮かびますが、IT技術が進歩したセキュリティにも必須です。むしろ現代人は、セキュリティ対策で日常的にお世話になっています。巻末には、そういった最新の暗号化技術のことが記されていて、情報処理を学んでいる人へのうんちくネタに使えます。もっとも、普通、暗号化の処理なんて仕組みを理解する必要なんて無いんですよね。知らなくてもセキュリティはできる!やっぱりスパイ小説の世界にどっぷり浸かる予備知識として読む方が面白いような気がします。
![]() | 暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで サイモン シン Simon Singh 青木 薫 新潮社 2001-07-31 by G-Tools |
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由似、風のなかで
- 2007年10月13日
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青春の階段を一歩登ったところで終わった「由似へ…」の続編が出ました。今度は少女コミックではなく、レディースコミックです。ヒロインの由似は、高校生から一気に社会人へステップアップ。初心貫徹で、看護師の道へ進んでいます。しかも、小児科希望。いかにも由似らしい選択です。そして、相手の慎司くんも獣医として着実なる一歩を進めていました。
ふたりの間が恋人同士のままなのは、由似の祖母が痴呆症のため、その看護問題が絡んでいたからでした。由似を育ててくれたしっかりもののおばあちゃんが由似を「由布子」と思いこんでしまっている。医療現場のプロだからこそ抱えてしまう葛藤や家族としての悩みが物語の中に織り込まれています。結局、ありのままを受け入れることで由似と慎司は結婚しますが、由似を取りまく環境はまだまだ風にさらされそうです。温和な風だけでないから、「風のなかで」というタイトルがついているんでしょうね。
現在3巻まで出てますが、その間に由似は、出産、祖母との別れ、父を支えてくれた女性との出会い、13歳の時死なせてしまった平林渉の家族との触れ合いなど、いろいろな経験をしていきます。あと忘れてはならないのが由似の親友である宮田さんのこと。彼女の中で「由似のパパ」は常に理想の男性の位置を占めてるようで、その恋模様は潔いのだけど哀しさがつきまといます。しっかりものの宮田さんにも是非幸せになって欲しいんだけど、相手がなあ。人の恋にはとやかく他人が口を挟むことができません。
![]() | 由似、風のなかで 大谷 博子 集英社 2000-02 by G-Tools |
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適齢期の歩き方
- 2007年10月 8日
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2007年の今では、タイトル的にかなりNGですが、雑誌に掲載されたのが1990年代ですので、その時代の「常識」をまず、念頭に置いておくのが第一点。そして、レディース雑誌にありがちな恋愛ものとは方向性が異なる作品であることが第二点の注意事項かな。タイトルだけみたら、絶対恋愛ものだと思いますよ。でも、実際は、お見合い4ヶ月で電撃結婚したカップルがいろいろな問題を乗り越えながら家庭を築いていくというホームドラマです。結婚式までのトラブル、新婚旅行でのハプニング、姑との同居問題に、仕事一途で古風な旦那とのすれ違いと、現代にも通じる家庭の問題目白押し。それをヒロインの如月さんがひとりではなく、夫の幸一とふたりで解決していくところに心暖まるものを感じます。
私が一番好きなエピソードは、如月さんが元職場の後輩に誘われて行った合コンで出会った医者が、別の患者絡みで幸一と知り合い、夫婦それぞれからノロケを聞かされ、自分の恋愛を見直す話です。幸一のお人好し性格が功を為したエピソードなんですが、そういう流れの話が多いのもこの作品の特徴です。古風なところがあるけれど、学力はあるけど出世に無欲で愛妻家。旦那にしたい男性像ナンバーワンかもしれません。
![]() | 適齢期の歩き方 (全6巻) 池田 さとみ ぶんか社 2005-09 (ぶんか社コミック文庫) by G-Tools |
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星くず
- 2007年10月 7日
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読む順が後先になってしまいましたが、「由似へ…」では亡くなっていた由布子が主人公の青春記です。心臓が弱くて学校も休みがちな由布子が出会った都築宏司は、不治の病と言われていた白血病を患っていました。なんたって20年以上も前の作品ですから、病気や治療法については現代の常識で突っ込んではいけません。
余命を知りながら懸命に生きていく宏司に由布子は次第に惹かれていきます。宏司は全てを明らかにした上で由布子との付き合いを認めてもらいに単身で由布子の両親に会いに来たり、とにかく潔さが半端じゃない。「悔いは残すなよ」という反面で「星になってラブサインを送る」と言う宏司。これぞ少女コミックの王道といえる作品です。
宏司の死後も物語は続きます。ヒーロー殺しちゃってどうするんだ?の疑問に応えるべく登場したのが香坂茂です。「宏が太陽なら茂さんは水」と由布子が言うように、深い愛で由布子を癒し、支え、生涯の伴侶となる男性です。もっとも登場時は危なっかしげな兄ちゃんでしたが。それがすばらしく出来た男になるんですから、人生ってわからないもんです。宏司を亡くして以降の由布子は、ただ生きているだけでなく、生きていると実感できる手応えのある人生を送りたいと願い続けてきました。病気であっても心豊かに生きること。現代人に忘れがちな人生観を気づかせてくれると思います。
![]() | ![]() | 星くず (上) (下) 大谷 博子 集英社 1997-11 by G-Tools |
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由似へ…
- 2007年10月 6日
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「由似へ…」を初めて読んだのは、別冊マーガレットに連載中の最終話でした。いきなり交通事故のシーンから始まっててすごい衝撃を受けた記憶があります。ヒロインの由似がどれほど自分を責めたか、身につまされます。その由似を救ったのが亡き母からの手紙でした。誕生日ごとに書かれた手紙は、その年の由似がこうだろうという状況にドンぴしゃで、幼子を残して逝ってしまった母親の愛情がひしひしと伝わってきました。それまでホームドラマ的な作品は陳腐な印象が強くて敬遠していたのですが、「由似へ…」で認識を改めさせられました。
ヒロインは由似ですが、手紙を通じて前作「星くず」のヒロイン由布子の存在感が恐ろしく強いです。由似の周りを埋めているキャラがみんな由布子と関わりがある人ということもあるでしょう。形は違えど、由布子の生き方に影響を受け、その心を受け継いだ人達が大勢います。中でも小野木卓也は、初心貫徹、心臓外科医で再登場。年の差カップル好きな私としては、幼馴染みの慎司くんより卓也お兄ちゃんを選んで欲しかったなあというのが本音です。
あとがきで作者も語っていますが、由布子と由似を超えるキャラはたぶんいないでしょう。長期連載が続いている翔子シリーズやペンションシリーズにしてもどこかに共通点があります。それが大谷作品の特徴であり、人への優しさを追求した形だと思うのです。其の手の作品は教訓めいていて好きになれない人もいると思いますが、悩みながらも他人に優しく生きていくヒロイン達が大好きです。
![]() | 由似へ… (上) (中) (下) 大谷 博子 集英社 1998-02 by G-Tools |
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彩雲国物語 白虹は天をめざす
- 2007年10月 4日
- 枕元に一冊
花を返上して藍州へ帰った楸瑛を追って劉輝までもが藍州へ。お供は婚前旅行の十三姫と邵可様。事態が急変以上に驚いたのが、よく紅家の叔父さんが黙っていたなということ。もちろん出発前に邵可が頭を撫でていったにちがいありません。一足送れて、秀麗も燕青とタンタンをお供に藍州へ向かいました。出発前の紅家の庭における燕青と静蘭のやり取り、面白すぎ。ラストの燕青とタンタンのやり取りも面白いですが、それと対比して遜色ない演出だと思いました。ホント、燕青って格好いいんだから!
藍州に戻った楸瑛を待ち受けていたのは、龍蓮と義理姉でした。それまでにもチラリと匂わしてありましたが、楸瑛が女性に満遍なく優しいのは、誰にも本気になっていないから。その原因が義理姉への慕情だったわけですが、帰ってきた地点で楸瑛は、義理姉への想いが思い出になり、珠翠へ本気になっていることを自覚します。長かったけど、やっとフラグが立ったか、と思ったのも束の間で、肝心な珠翠は、どこまでも邵可様一筋。
「あーっ!!あんなところに邵可様がっ!!」
これにはマジで大爆笑。身も蓋もない楸瑛に一同唖然。でも、それだけ状況はせっぱ詰まっていて、楸瑛も格好を付けてる場合じゃなかったわけです。形振り構わず自爆した楸瑛ですが、その成果は空振り。まだまだ試練は続きそうです。
一方、劉輝も秀麗に勝負を持ちかけました。旅の中で「王であり続けること」を選んだ劉輝。秀麗が官吏としての自分を一番にしている限り、どう頑張っても劉輝に勝ち目はなさそうですが、そこは乙女系ファンタジーですから、きっと打開策があるに違いない。恋愛成就もいいけれど、官吏の頂点に立つ秀麗もいいなあと思うんですよね。
双花菖蒲のひとり、楸瑛は答えを出しました。次はいよいよ迷子くんの番ですね。彼は養い親への柵をどうやって超えていくのか。今回王都に居残った静蘭がどう布石を打っているのか、次作が見物です。こうしてみると、やっぱり静蘭って貧乏くじ体質?類は友を呼ぶにあやかって、紅家には能力を持った似たもの人材が集っています。
![]() | 彩雲国物語白虹は天をめざす 雪乃 紗衣 角川書店 2007-08-31 by G-Tools |
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彩雲国物語 青嵐にゆれる月草
- 2007年10月 3日
- 枕元に一冊
御史台で一歩を踏み出した秀麗に与えられた仕事は、もちろん雑用から。とはいっても新人官吏の時のいじめとはひと味もふた味も違っての「正式な」お仕事です。お供は見習い御史の蘇芳ことタンタン。初め冗談かと思ってましたが、蘇芳というよりタンタンの方が圧倒的になじめるキャラです。彼は秀麗に「世間の常識」を教えてくれる貴重な存在です。これまでの秀麗はなんだかんだ言っても静蘭がガッチリガードしてて、そういう方面にテンで疎かったですから、秀麗がもまれて歩き出すにはちょうどいいコンビになりました。
日常業務に慣れて来た頃、大きな仕事が秀麗に舞い込みます。秀麗にしかできないと断言されたお仕事は、後宮での替え玉。しかも王様のお后候補として藍家が送り込んできた十三姫の身代わりというのだから、嫌が上でも秀麗の顔が引きつります。引きつったのは、秀麗だけでなく、劉輝と楸瑛もです。先送りしてきた問題が、十三姫が送り込まれてきたことによって噴き出してきたのです。
周りの事情は事情として、秀麗はキッチリ仕事をこなすべく奮闘します。天敵、清雅に大きな顔をされないよう、秀麗はそれこそ頭も身体もフル回転。周りが凍り付くという秀麗と清雅のやり取りは、なかなかの見物です。これまでにない嫌われ役なんだけど、彼には彼の信ずる道があるようで、この先どう出てくるのか楽しみ。
この巻で一番嬉しかったのは、燕青の再登場ですね。初登場こそ紅家の門前に行き倒れという締まりのない状態でしたが、それ以降は、いつもカッコイイ。今回も牢屋で再会と場所はちょっとアレですが、それ以降は、めちゃめちゃ格好よかったです。ホント、オトナでイイオトコなんですね。
![]() | 彩雲国物語―青嵐にゆれる月草 雪乃 紗衣 角川書店 2007-03 by G-Tools |
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八犬伝
- 2007年9月 5日
- 枕元に一冊
江戸時代で忠義ものとくれば、「忠臣蔵」が一番にあがるのでしょうけど、娯楽性でいえば、「南総里見八犬伝」に勝る作品はないでしょう。裏話として、作者の滝沢馬琴が視力を失った後は、嫁の代筆で仕上げたのも有名です。それまで学問らしきことにはほとんど縁のなかったお嫁さんが口述筆記で書き上げたというのが一番の驚きかな。
物語は、ひとくちに言えば、お家再興物語。その縁を結んだのが、里見家の伏姫が死の間際に散らせた8つの玉で、「犬」の字を持つ侍、八犬士がその中核を為します。一番ロマンティックなのは信乃と浜路かな。一番最後に登場する「仁」の文字を持つ犬飼親兵衛が一番優遇されている気がするのはなぜだろう。やはり当時の人にとっても「仁」は特別な意味を持つ文字だったということでしょうか。
漫画はほぼ原作どおりに描かれています。複雑に絡み合った人物関係をうまく噛み砕いて物語に織り込んだところが一番スゴイと思う。さらっと表面をなぞっただけでは二世代にわたっている親子関係と因果関係がわかりにくいのだけれど、丁寧に描いてあるので斜め読みしなければ初読で理解できると思います。
原作との違いは、ラスト。オリジナルに変えてあるのではなく、里見家復興後の八犬士のその後を省いてあることです。これは8巻のあとがきで作画者が説明してますので、理由はそこでご覧下さい。漫画としては、あのラストで十分いいたいことは伝わったと思います。八犬士としての宿命を離れ、自由なひとつの命として生きていくという、人としての前向きさがいいですね。私は原作の諸行無常な終わり方より、漫画の方が未来に希望が持てて好きです。
![]() | 八犬伝 (全8巻) (作画)碧也 ぴんく (原作)滝沢 馬琴 ホーム社 2004-11 by G-Tools |
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彩雲国物語絵巻
- 2007年9月 3日
- 枕元に一冊
TVアニメ第一シリーズの公式ガイドブックという位置づけで、まんまそのとおりです。彩雲国物語の人物関係、国家の組織図、彩七家の家格差と位置づけなどなど、相対関係がわかりやすく図解してあるので、登場人物の因果関係や地位的関係がよくわからない!という人にはオススメです。原作本をしっかり追いかけて、その他諸々の関係図が理解できてる人には、なくても大丈夫なアイテムかな。キャラ紹介や解説はかなり詳しく書かれているので、ファンブックとしても十分通用します。
私の購入目的は、原作者書き下ろしの短編小説「天女の羽衣」です。ホント、短編。内容は、表表紙を挿絵にしたものです。時期は、秀麗が後宮に入って、劉輝が「王」として会う前日。この時のやりとりが劉輝に「王」として秀麗に会う決意をさせます。本編やアニメでもそのあたりは十分描かれていると思うのだけど、より劉輝よりのお話です。
面白どころとしては、本編やアニメで「これってどうよ?」とツッコミたいシーンや設定を臆面もなく取り上げているところでしょうか。「彩雲国七不思議」として堂々と紹介しています。元がファンタジーでライトノベルだから、深い追求はせずにサラリと流して楽しむファンも多い中、敢えて取り上げたところに敬意を表します。
中身は本当に第一シリーズのみなので、原作ファンとしてはちょっと物足りないですが、このクオリティで第二シリーズのガイドブックも是非作って欲しいです。
![]() | 彩雲国物語絵巻 彩雲国広報局 角川書店 2007-08-31 by G-Tools |
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海の綺士団
- 2007年6月19日
- 枕元に一冊
身体はオンナだけど、心は誰よりも男らしい女性アシェルは、父親の教育方針もあってか、キリスト教が世界に誇るマルタ騎士団に入団しました。女人禁制の修道騎士に女性が入団できるわけないだろ!というツッコミは御法度です。そのあたり、他の騎士がどう納得するかが第一巻で描かれてます。
アシェルは金髪碧眼、文字どおり絵に描いたような中世のレディです。しかし、ドレスアレルギーという特異体質で母親が送ってきたドレスを速攻で送り返します。トラブルも多々あったけれど、まっすぐな気性と騎士としての真摯な姿勢で騎士仲間にも島民(特に女性)にも大人気。俗に言う、天然のタラシです。それで貧乏くじを引いているのが、副団長たち。中でもルーカスは惚れた弱みもあって振り回されっぱなしです。修道騎士は女性との恋愛は禁止されていますが、貴族のお坊ちゃまには還俗という裏技があるし、ルーカスの家庭事情を描いたエピソードでそのあたりの伏線も引かれているので問題はないでしょう、たぶん。
当時の欧州(キリスト教)は、大スレイマン率いるオスマン帝国(イスラム教)と戦争状態にあり、マルタ島は大きな戦場になった場所です。歴史を紐解くと、どの戦いがクライマックスになるのかわかってしまいますが、騎士たちのエピソードが魅力的に描かれているので楽しく読めます。ある程度キリスト教の知識があった方がオススメできるのは言うまでもありません。史実重視の人には向きませんが、騎士道に憧れる乙女には面白いと思います。
![]() | 海の綺士団 (1) 戸川 視友 冬水社 2005-07-20 時は16世紀。地中海最強を誇るマルタ騎士団を、麗しの女綺士・アシェルが変える!! 女子禁制の騎士団に堂々乗り込んだアシェル。敵も味方も巻き込んだ華麗なる或いは翻弄の騎士団物語いざ開幕!! by G-Tools |
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蒼のマハラジャ
- 2007年6月16日
- 枕元に一冊
英国大使の娘・モイラとラジャスタン藩王国の王子・シルバ。生まれた場所も育ち方もまったく違うふたりは、最初のうちは反発しあうが、ある事件をきっかけにして心を通わせ合うようになり、生涯を共にするパートナーとなる。第二次世界大戦前のお伽噺のようなインドの藩王国での物語です。現代ならごく当たり前の感覚が当時は通用しません。先進的な女性であるモイラはそのギャップに苦しみながらも、積極的な行動でそれをひとつずつ克服していきます。もちろん、その陰にはシルバの支えがありました。
世界大戦と民族独立とを抜きには語れない作品です。時代の波にもまれることでシルバは近代に目覚め、故国を存続させるために奔走します。孤独なおチビさんからひとりの青年への成長。ヒロインはモイラですが、ふたりでワンセットという印象が強いです。時代に望まれたカップルとでもいいましょうか。
シルバの打つ手は全て成功していますが、そのために二人がどれほど努力したことか。持ち前の能力と運と人脈と、文字どおりフル回転で生きていきました。トップに立つ人には才覚も必要なのだと実感させてくれます。成功物語なので読後感はとてもいいです。王様と王妃様が幸せに暮らしました、で終わる素敵なお伽噺です。
![]() 蒼のマハラジャ 1 (1) | ![]() 蒼のマハラジャ (2) | 【タイトル】蒼のマハラジャ 【作者】神坂 智子 【出版】文庫版:ホーム社(集英社)2007年5月18日 【内容】角川書店(1990年)からコミックス全10巻で発行されたものの文庫版。 英国統治下のインドを舞台にくりひろげられるモイラ&シルバのエキゾチックロマン! |
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どこかで誰かが見ていてくれる
- 2007年5月12日
- 枕元に一冊
一昔前の時代劇好きなら、「福本清三」と聞いて、すぐに顔と名前が一致しなくても、「エビぞりの切られ役」といえば、「ああ、あの人!」とわかると思います。TVドラマでも映画でも、この人がいなくては、殺陣に華がない。そんな役者さんです。「どこかで誰かが見ていてくれる」は、その福本清三の聞き書き本です。
時代劇に限ったことではありませんが、ドラマの出演者に名前が残るのは、主な役者だけです。その他大勢の名前のない役についた俳優の名前は残りません。それでも福本さんは、特徴のある切られ役としてファンがつきました。彼は「大部屋俳優」のプロなのです。インタビューでは、切られ役、死体役に徹した姿が語られていますが、そこにあるのは、主演の役者となんら変わることのないプロ意識です。そして、彼らがいて初めて主演俳優達が活かされてくる。殺陣事情を織り交ぜての裏話は大部屋俳優の誇りが詰まっていました。
成果主義が導入され、終身雇用制が崩壊しつつある社会において、目立たない仕事を実直にこなすことは忌避されがちです。しかし、そんな時代だからこそ、名のない役を黙々とこなしてきた福本さんのあり方が逆に評価されたのではないかと思いました。仕事を受けたからには、プロとしてやり遂げることは、当たり前であっても、現実は厳しい。とかく逃げ出しがちな現代社会への警告のひとつとして私は受け止めました。
![]() | どこかで誰かが見ていてくれる―日本一の斬られ役 福本清三 福本 清三 小田 豊二 集英社 2003-12 昭和33年、15歳で東映・京都撮影所に入り、大部屋俳優として、切られ続けて43年。死んだ回数2万回。代表作は「なし」。そんな大部屋俳優の、笑いあり、涙ありの感動ドキュメント! |
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大江戸きっちん
- 2007年3月22日
- 枕元に一冊
懐石料理の老舗、深堀屋の八代目(予定)賢司郎のタイムスリップした先は、170年前のお江戸で、二代目宇吉が店を借金の形に取られたところでした。現代の知識を少し足した料理で再出発!と、子孫がご先祖様を助ける展開なわけです。当時の生活様式を踏まえての話作りで軽いながらも落ち着いて読ませてくれました。遠山金四郎など、実在の人物をさりげなく混ぜるところも心憎いです。
料理人の物語なので、当然ネタは料理です。しかし、江戸時代の一品料理は、現代に比べると調味料の幅が狭い!けれどもそれを補って有り余るほどに素材に恵まれていました。よいものをじっくり使い込む、江戸の気質をうまく活かした物語です。
グルメ漫画というと、とかく料理比べな展開が多いですが、人情と技によって宇吉は自分の料理を形成していきます。その姿勢は、謙司郎にも影響を与え、調子のよいだけの若者から真面目な料理人に修正していくのでした。最後は、めでたしめでたしで気持ちよく終わるのも私好みというところでしょうか。
![]() | 大江戸きっちん ながはま としみ 講談社 2000-02 by G-Tools |
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臆病者のための株入門
- 2006年10月30日
- 枕元に一冊
たまには仕事関連の本を読んでみるか、と手にしたのが「臆病者のための株入門」です。いまでこそ部が離れてしまいましたが、一応金融部門繋がりということで…。
投資といえば、昔は証券会社だけでしたが、今や銀行でも郵便局でも小金があれば投資信託が買える時代です。そこで投資信託の本では面白味がないので、もう一歩踏み込んで「株」そのものの入門書を読んでみました。表紙に「カモられずにお金を増やす方法」とありまして、巷にあふれる「株で成功した物語」とは趣を異にします。
果たしてそのとおり、これをしたら一攫千金という本ではありません。慎重に基本に忠実に、非常に地味な内容です。世の中にうまい話が転がっているはずもなく、地道に稼ぐのが一番。とまあ、身も蓋もない言い方になってしまうけれど、デイトレで一攫千金を狙いたい人には無意味な内容です。長期的視点に立って、財産形成をしようと思っている人には参考になる内容だと思います。
![]() | 臆病者のための株入門 橘 玲 文藝春秋 2006-04 |
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彩雲国物語 緑風は刃のごとく
- 2006年9月30日
- 枕元に一冊
前巻「紅梅は夜に香る」で謎の人物だった高位の官吏の正体がほぼ判明。秀麗にとっては味方半分的半分といった微妙な人達です。明らかに敵-邵可に言わせれば、好敵手か天敵-となる人物も登場してますます秀麗の周りは賑やかになりました。が、反対に劉輝の周りは寂しくなっていきそうな雰囲気で我慢ばかりしている彼がちょっと哀れです。いかに悠舜が宰相として側にあるとはいえ、双花菖蒲の代わりにはなりませんからね。まあ、永遠の別れにはならないでしょうが、初期キャラの出番が減ると寂しいです。
頑張る秀麗はこれまでそのガンバリを否定されたことがないという、非常に幸運な人でした。それが今回は見事に否定されます。「正義を口にしたいなら官吏をやめろ」「何かを成し遂げたければ、相応の位につくまで理想を捨てろ」秀麗のこれまでを真っ向から否定する言葉が彼女に投げられます。反論できないけれど、真っ向から受け止める覚悟を決めた秀麗。しかし、ああいう部署は…ハッキリ言って性格歪みますよ?私は普通の監査だけでも懲りたもん。吏部とは違う意味で人間性を改造されそうです。
そんな土壇場に追いつめられた秀麗が秀麗であり続けられるよう側にいてくれることになったのがタンタン。静蘭の裏の面をかなり垣間見ることになった気の毒なお坊ちゃまですが、最後の一線を見極める能力を持ってる彼が、それこそ最後の一線を秀麗が踏み外さないよう力を添えて官吏の道を共に歩んでいくことになるのでしょう。賢い影月とは正反対の相棒を得て秀麗は官吏続行です。
![]() | 彩雲国物語―緑風は刃のごとく 雪乃 紗衣 角川書店 2006-09-30 謹慎が解け、ヒラの官吏(冗官)として王城に復帰することになった紅秀麗。しかし彼女を待っていたのは、「一ヶ月以内にどこかの部署で使われなければクビ」という冗官たちへのキツイ解雇宣告だった!!「官吏でありたい」と頑張る秀麗だったけど、他のダメダメ冗官たちの面倒まで見るハメになり!?期限付きの難題に、秀麗の底力が炸裂!? |
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やさしい竜の殺し方
- 2006年9月21日
- 枕元に一冊
津守時生の作品は昔読んだときには、自分の好みから外れてるとそれ以後読まずにいたのですが、イラストに惹かれてコミックを購入。以前とは全然違う作風で、一気にはまりこみました。同時に小説版も角川ビーンズ文庫から発売になったので、大人買い。
主人公は女性より美しい騎士アーカンジェルと彼に誓約した幻獣王ウランボルク。みかけはアーカンジェルが年上だけど、竜であるウランボルクの方が遙かに年を取ってます。でも、まだ子ども。彼らと傭兵仲間のドウマ、聖女王の血を濃く継ぐ王女クローディア、クローディアのお目付兼保護者の僧侶ガイスの5人が、陰界から召還されてしまったらしい幻獣を倒す道中記です。幻獣の住む陰界と人間の陽界の安定を掛けたシリアスな世界観が根底にありますが、なにせ5人の会話がボケとツッコミでテンポ良く展開するため、深刻な物語をサクサク読み進むことができます。
コミックのすごさはイラストの力が大きいです。華麗なキャラと派手な演出で見事に物語の世界を描ききっています。なかでもウランボルクがセファイドになったときの度派手なカットは秀逸です。お調子者だけどやはり王に相応しい思慮深さを持ち合わせてる幻獣王、好きだわ。小説の1巻をコミックの1巻に併せてるので若干説明不足気味ですが、初めてこの物語に触れる人へ世界観を伝えることはできていると思います。なんとなく物足りないと思ったら、小説を読みましょう、ってことで。
![]() | やさしい竜の殺し方 (1) 津守 時生 加藤 絵理子 角川書店 2006-07-21 千年の昔、竜を頂点とする幻獣王と人間の王は大災厄を逃れるため、世界を幻獣が棲む“陰界”と人間が住む“陽界”の二つに分けた。その時、幻獣王は聖王に「誓約」した。今後、幻獣王は世界が危機に陥った際には陽界を訪れ、聖王の血筋から愛する人を見つけて世界を守ると…。そして時は流れ―美貌の元聖騎士と黒髪の少年が出会い、運命が大きく動き出す!「愛してる」は最強呪文―剣と魔法のファンタジー登場。 |
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彩雲国物語 紅梅は夜に香る
- 2006年9月 5日
- 枕元に一冊
待ちかねた新章スタートです。舞台は前巻までの茶州から一転、王都へ帰ってきました。前が彩八家のうちの茶家なら、今回は同僚の実家「碧家」が大きく絡んでくる展開です。まだ確定じゃないけど、今回の事件の絡み具合からしてたぶんそうではないかという私の予測。王都で起きた事件はカタがついたけど、秀麗はイイトコを全部監査機関に根こそぎもっていかれてしまい、詰まるところただ働きみたいなものです。まあ、その頑張ってる過程を王をはじめ双花菖蒲に宰相たち上層部が知ってますから最悪の事態にならないよう手は打ってくれると思います。というか、打たなきゃ、秀麗が官吏を退官させられてしまうので話にならない。もっともどれほど苦境に立たされようが、彩雲国の歴史が「文に李紅あり」と刻んでいる以上ひっくり返ることはないと思いますが…。
茶州であれだけ暗躍して王都でももったいぶって登場した縹家は今回全く登場しませんでした。王都に帰るし珠翠のこともあるので絶対縹家がメインに出てくると思ってたんですよね。とはいえ、表面上解決した事件もトカゲのしっぽ切りの状態にすぎませんから、最後まで読んでみないとわかりません。個人的願望がだいぶ含まれてますが、早く燕青に出てきて欲しいよお。たぶん彼の代わりと思われる蘇芳ではやっぱり役不足…黒静蘭のためとはいえ、残念な新キャラです。
ラストは秀麗の「えええええ…!」という雄叫びで終わってますが、さて、彼女に何が起こったのか。辞令を見ての反応なので次の任官が決まったのでしょうけど。さすがに任官は許されたものの俸禄はゼロってことないよね?秀麗には官位最下位よりそっちの方が絶対に堪えるだろうから。気になる運命は、今月末に発売される「緑風は刃のごとく」までお預けです。
![]() | 彩雲国物語 紅梅は夜に香る 雪乃 紗衣 角川書店 2006-08-31 任地の茶州から王都へ帰ってきた、彩雲国初の女性官吏・秀麗。しかし久々の故郷に喜ぶ間もなく、彼女はある出来事の責任をとるため、高位から一転、冗官として再出発することに! しかも、一時登城禁止を言い渡された秀麗は、街で自分にできることを探し始める。周りの皆に見守られつつ、ガンバル秀麗だけど、突然ヘンテコな貴族のお坊ちゃまに求婚されて!?またもや嵐が!? |
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はい、こちら国立天文台
- 2006年6月13日
- 枕元に一冊
ネットに親しんでいる人なら一度くらい覗いたことがあるであろう「絶対サポセン黙示録」。その国立天文台版と思ってもらえればイメージしやすいだろうか。「はい、こちら国立天文台」は、国立天文台広報普及室に務める著者の珍問応答奮戦記なのだ。
![]() | はい、こちら国立天文台―星空の電話相談室 長沢 工 新潮社 2005-08 「天文台の電話番」の改題作 「今日の日の入りは何時ですか?」「金星と木星はどちらが明るいんでしょうか?」「月が見えなくて、困ってるんですけど」等々。宿題を抱える子供の相談から、”ワケあり”の人達の珍問奇問まで、年間一万件を超える天文台への問い合わせ。真摯に対応する広報マンの奮闘を描く。見えない相手のやり取りに、様々なドラマが見えてくる。夜空に関するウンチクも満載。 |
夜空に興味があって天文学に少なからず興味を持った人なら抱く疑問の数々を問い合わせることがあるかもしれない。しかし、現実は、なんだコレ?な珍問奇問の何と多いことか。それに真摯に応えている広報マン達には本当に頭が下がります。私なら、絶対1日でキレてますよ。
本書のメインは、微笑ましいエピソードや目から鱗の夜空のウンチク話で、全体の印象としては読みやすい本です。忘れていた知識を思い起こさせてくれたり、天体観測時の困った思い出とか甦ったり、私にとっては青春の思い出振り返り紀行みたいな感じでした。彗星接近時とか、しし座流星群とか、ホントに懐かしい。
一番共鳴できたのは、電話1本で面倒くさいことを解決しようとする困ったちゃんへの対応です。行政関係の相談室にかかってくる電話ってこの手の似通った質問者が結構多いのは事実です。最近はネットでも質疑応答サイトが花盛りですよね。その中で本当に困ってる人ってかなり少数派で、その他大勢の質問者は自分で調べる努力を全くしていない。「聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥」とはいうけれど、自分で調べることを習慣づけないといつまでたっても成長しないわけで。相談室や広報室は必要だけど、その使い方が間違ってるような気がするのは私だけ?仕事上お世話になるだろうマスコミ関連の人には質問するときの心得として是非、一読して欲しい本です。
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数学は嫌いです!
- 2006年5月23日
- 枕元に一冊
数学は好きだけど苦手。そんな矛盾を抱えた人、案外いるのではないでしょうか。
石川英輔さんの「数学は嫌いです!」は、そんな中で読んだ本でした。
![]() | 数学は嫌いです!―苦手な人のためのお気楽数学 石川 英輔 講談社 2004-07 買い物に行ったときのお釣の話から二次方程式へ。 また、蛇口から垂れる水の量から積分の話へ。これ一冊で数式も苦じゃなくなる! 数学嫌いを大変身させてくれる目から鱗の名教則本。 |
タイトルで言い切っているように、この本は気楽に読める娯楽本であって、専門書ではありません。数学が嫌いな営業のマナブくんが経理のカズコさんに、まんまと日常に置き換えられて方程式から微積分までを学んでしまうお話です。実生活にそのまま当てはまる内容なのですが、現実にどのくらいの人が、数学していることやら。四則計算以外にも数学が必要であることは、頭ではわかるんです。しかし、問題集の現物を見ると避けたくなってしまう、この矛盾をどうにかしてくれ。
江戸時代で奉納されている絵馬に高度な和算の問題が記されていることから、当時の人々は娯楽として数学を楽しんでいたらしいですが、私にはその方が信じられません。春本ならわかるけど。
結局、数学が身近な学問であることは納得できましたが、苦手意識がなくなったかというと、かなり怪しいです。けれども、頭ごなしに「数学は嫌い」と言ってる人には、目から鱗の部分は多いと思います。少なくとも「食わず嫌い」ではなくなっていてほしい。そんな願いが聞こえてくる本です。
作者の石川英輔さんは、ユーモアたっぷりのSFを書く方で「大江戸神仙伝」シリーズはドラマ化されてます。同時に江戸時代の生活事情に関する著作も豊富です。どれも語り口がユーモアにあふれてます。
生活事情に詳しいから、生活に密着した数学を話題にできたのだと思います。でも、数学の苦手な人は「数学」の文字だけで敬遠しそう…。一番手に取ってもらいたい人に手にしてもらうことが、一番の難関かも。
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凍鉄の花
- 2006年4月18日
- 枕元に一冊
大きなタイトルは「凍鉄の花」と「花の如く」のふたつに別れていますが、「凍鉄の花」はそれ自体が土方メインの短編集です。沖田、琴、芹沢との絡みがそれぞれ描かれてます。一番変わっているというか、斬新な解釈が、沖田の二重人格設定です。土方を兄のように慕う沖田と、父の敵と憎悪し狙う沖田。土方の過去と絡めてなかなか説得力のある解釈でした。憎まれて狙われても、沖田の「義」は近藤にあることを理解してくれていた土方。菅野さんの土方は、冷酷で格好良いけど、どこか不器用な土方の為人をよく表現していると思います。男としては素晴らしい生き様ですが、人間としては哀しい。
それでも土方は成功した男の生き方のひとつだと思います。同じような性格なのに、闇に葬られてしまったのが芹沢鴨。両者の違いは紙一重だと思ってます。そんな芹沢は梅に象徴されています。寒空に凜と咲く梅の花を芹沢に喩えるとは、ちょっと贔屓か?でも、芹沢も覚悟した死を無意に活かされた続けた武士という描かれ方なので、これも新解釈なのかもしれません。視点を通説に絞らず描かれた秀作です。
斎藤ファンの私としては、ちょこちょこ彼が出てきたのでそれだけで満足です。ここの斎藤は土方思いの「いいひと」に描かれてます。
「花の如く」はファンサービス的な書き下ろしです。注目するは、隻腕の美剣士・伊庭の登場です。ほんの数コマですが、伊庭ファンの心を鷲掴み。土方が霞んでますよ。
<作品データ>
【タイトル】凍鉄の花
【作者】菅野文
【出版】白泉社
【物語】時は幕末、京でその名を馳せた新選組。それを取り仕切るは「鬼」と呼ばれた男、土方歳三。そして土方を兄のように慕う組随一の剣士・沖田総司。そんな彼の中に潜む土方を増悪する人格。もう一人の沖田が今、目覚める!新たなる新選組烈風伝、ここに登場。
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北走新選組
- 2006年4月18日
- 枕元に一冊
新選組といえば、京都での活躍が有名ですが、「北走新選組」はそのタイトルが冠するとおり、晩年の函館時代が舞台になっている短編集です。メインを張るのは、「碧に還る」で野村利三郎、「散る緋」で相馬主計、「殉白」で土方歳三の三人です。いずれも彼らの最期を描いた秀作です。新選組最後の隊長であった相馬はともかく、野村を扱った作品というのは珍しいと思います。隊士に詳しくない人だと、「ソレ誰?」の可能性が高い。でも、野村だって京都時代からの古株です。
「碧に還る」は、野村が女に失敗して意地で切腹しかけたところを土方に救われ、武士として逝った心意気が細かに描き込まれてます。宮古湾会戦は蝦夷方が海軍を失った痛い戦いです。でも、新政府軍にとってはガトリングガンの威力を誇示した場でした。刀から銃へ、そして連発砲へ。時代は確実に武士を古き物としていきました。心意気だけでは勝てないけれど、それでも武士に憧れて新選組に入った若者には、武士として死ぬことが何よりの餞となる。賛否両論のでそうな死に様でした。
「散る緋」は、宮古湾会戦で負傷しながらも生き残り、土方亡き後の新選組隊長を名乗った相馬の切腹に至るまでの心理を描いてます。彼も結局、武士として死ぬことで新選組を終わらすことしかできなかった。完全に男性視点の話しです。でなきゃ、新選組にはならないわけですが。
「殉白」は、土方と大鳥の対照的な人柄をうまく噛み合わせた作品です。常敗将軍の大鳥と軍神の土方。素直すぎる大鳥と照れ屋の土方。どれも二人の噛み合わない場面をうまく捉えてます。噛み合わないからこそ本音が見える。土方の描き方はベタですが、そこに大鳥が入ることで土方の生き方をより明快なものにしていたと思います。
<作品データ>
![]() | 北走新選組 菅野 文 白泉社 2004-09-17 大政奉還を是としない旧幕府の強硬派の中に、かつて京で名を馳せた新選組の姿があった。戦い続ける彼らは北へと転戦し、やがて蝦夷地函館へ至る。義を信じ、義に殉じた新選組隊士達の姿を描いた菅野文渾身の最新作登場! |
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死がふたりを分かつまで
- 2006年2月28日
- 枕元に一冊
少年系コミックスなのに、タイトルがレディスコミックばりのロマンス色にあふれています。しかも、それがヒロインが告げた依頼の台詞ときました。12才の少女の台詞としてはマセすぎでしょ!でも、そう突っ込ませない危機感と緊張感で物語がどんどん進んでいきます。
さて、主人公の土方護は、名前から想像できる通りの男です。盲目だけど無茶苦茶強い。日本刀を持ったらほぼ無敵です。こういうところ、新選組の土方の素因100%で、チャンバラ好きにはポイント高いです。昔、高階さんのコミックでやはり盲目のイケメンキャラと少女の組み合わせの作品があったのですが、少女漫画の読者層にはウケが悪かったのか、単発で終わりました。設定は好みなので、少年漫画でどういう風に描かれるのか興味があります。
自分が助かるための予知として、土方にボディガードを依頼した遙ですが、その地点で彼女は土方にかなりの好意を持っています。女のカンってやつでしょうか。短時間の内に彼に関する先読みの力を発揮して、それで土方は窮地を救われました。遙の力を有効に使うために動き出した組織に土方も巻き込まれていきます。この先、世界的なスケールにまで発展してくれそうなので、ますます期待度大です。
![]() | 死がふたりを分かつまで(1) たかしげ 宙(原作)、 DOUBLE-S(作画) スクウェア・エニックス 2005-12-24 あらゆる物質を切り裂く日本刀を駆使する盲目の男・土方護。巨大企業の陰謀に巻き込まれ、彼に助けを求める者があった。遠山遙、的中率90%越の予知能力を持つ少女。彼女が告げた依頼期間は、「死がふたりを分かつまで」…。 |
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毎日晴天!
- 2006年2月10日
- 枕元に一冊
大人が主人公でキス止まりのボーイズラブということで安心して読めたのが二宮悦巳さんの「毎日晴天!」です。原作は結構巻数があって後半行き着くとこまで行っちゃうらしいですが(まだ未読なもんで)。
SF 雑誌の編集者・帯刀大河(おびなたたいが)に、ある日突然 新しい家族ができちゃった!? 寝耳に水の姉の結婚で、義兄となった阿蘇芳秀(あすおうしゅう)は、 なんと担当作家で、高校時代のクラスメート。 でも大反対する大河をよそに、肝心の姉がいきなり失踪!! おかげで大河は弟達の面倒を 見つつ、なし崩しに秀と同居するハメに…!?
テーマは、家族の絆。戸籍という紙切れで繋がってるのではなく、情による絆で築かれているのが家族である、と。家族を知らない秀が大家族の帯刀家に憧れていて、そこに入っていきたいけど、どうしたらいいのかわからない。取りあえず、秀は受け入れてもらえるように努力します。一生懸命考えて、みんなの気持ちを察して動くけれど、決してみんなとぶつかりません。というか、感情をぶつけ合っていいのだということを知らず、またわからない。失いたくない思いが働きすぎて逆に地雷を踏んじゃった、かな。
前半は、押しかけてきた秀とその養子・勇太が居着くまでのドタバタと、姉・志麻の失踪、編集のお盆締め切りと続けざまに事件が重なって、登場人物のことなど考える間もなく展開していきます。怒濤の展開?というか、それが落ち着いた頃にようやく本筋の大河と秀の関係が明らかになりました。両思いのすれ違いから、流れに流されて来たって感じですね。告白しながら秀は、昔の事情を知っていた志麻が同居をお膳立てした可能性を確信してます。そこまで他人の考えは読めるのに、自分からは感情をぶつけられない秀は、かわいそうな人間です。勇太はそう感じてしまったので養子となった。けれど、大河は向き合ってぶつかったから恋人になった。読みながら久々に赤面してしまいました。
原作の小説は、勇太と真弓を主人公に更に広がってます。大河と秀のその後もすんなりとは進展せずいろいろあるらしく、ホームドラマ的展開らしいので続きを読んでみようかな…。
![]() | ![]() | 毎日晴天! (全2巻) (原作)菅野 彰 (作画) 二宮 悦巳 徳間書店 キャラコミックス |
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動物のお医者さん
- 2006年2月 8日
- 枕元に一冊
「動物のお医者さん」は過去、テレビ番組にもなりましたので、かなり有名な作品だと思います。
知る人ぞ知るH大の獣医学部生、西根公輝と彼を取り巻く人々と動物の物語です。シベリアンハスキーが人気犬となりやがて飽きられていったというおまけ付き。ハスキー犬が柴犬より賢くないことは、あらかじめわかっていたことなのに…。人間の身勝手さが垣間見られた瞬間でもあります。
それはさておき、個性的なキャラ(動物を含む)のなかで一番のお気に入りは菱沼女史。あまりにも本人に似ているからと言う外部の意見は無視します。単に親近感が湧いただけです。ユニーク度では漆原教授を上回る人はいないでしょう。同情すべきは友人の二階堂くん。いちいち挙げていたらキリがありません。それほどにみんな魅力的なのです。共通点は優しさかな。むろん人間に限ったことではありません。野生の動物にだって、愛情をもって接しているのです。
何気ないキャンパス風景ですが、女子の奮戦が目立つところに未来性を感じられます。医学の世界は人間でも動物でもまだまだ男子優先です。医者は体力が勝負の決め手の世界のひとつですから、男と女の体力差はどうしようもありません。だからこそ頑張っている女子学生にエールを送りたくなるし、西根家の女たちのパワフルさに憧れるのです。万全とはいえない環境の中で主人公達の学生生活が淡々と過ぎていきます。喧噪の中にも公輝は己を失わず生きてる。まさに我が道を行く。これもまた現代っ子の姿のひとつでしょう。それでいて、ほっこりした優しさを感じられる作品なのです。
![]() | 動物のお医者さん (第1巻) 佐々木 倫子 白泉社文庫全8巻 H大受験前、その構内に足を踏み入れたときから、ハムテルの運命は決まっていた。怒った顔でも実は心優しいシベリアン・ハスキーのチョビ、関西弁姉御肌の猫のミケ、傍若無人・暴れん坊鶏のヒヨちゃん、小さな幸せが嬉しいスナネズミ、そして西根家をとりしきるハムテルの祖母。片や、ネズミ嫌いの友人二階堂、アフリカ狂いの漆原教授に低血圧変温人間の菱沼聖子ら超個性派勢ぞろいの大学の面々に囲まれて、獣医師への門は開かれた。(第1巻より) |
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