FTとSF Archive
彩雲国物語 隣の百合は白
- 2007年11月 3日 20:55
- FTとSF
二ヶ月ぶりの彩雲国物語の新刊は、本編ではなく外伝です。既に雑誌で掲載済みの「恋愛指南争奪戦!」と「お伽噺のはじまりは」+書き下ろし「地獄の沙汰も君次第」の取り合わせです。これまでもそうでしたが、雑誌掲載の2本もちょこちょこ手直しされているので初出時と読み比べると面白いかも。後付設定にあわせて修正してあります。
メインは、もちろん書き下ろしの秀麗の叔父・黎深メインのお話です。これまで名前だけの登場だった謎の女性、百合姫の全貌が明らかになります。「お伽噺のはじまりは」とペアで出されたのも納得。そして、なぜこの時期なのかも何となく理解できます。おそらく百合姫の存在が本編の伏線になるんじゃないかと。ただ、より理解するには雑誌掲載のみで文庫本未収録の「鈴蘭の咲く頃に」を読んでないと難しいかも。だって、いきなり「お手玉」ネタが出てくるんだもん。
それはさておき、天上天下唯我独尊な黎深のヨメになった百合姫は、よくできた女性です。紅家には我が侭な次男を支える三男坊がいますが、その彼をしても押さえられない黎深に必要とされるなんて、この上なく不幸な身の上と言えなくもないですが、百合姫はその人生を自分で選びました。その選び方もかなり黎深のワガママに振り回されてますが、自分の居場所を確認できる代償というところでしょうか。作中、一番気の毒なのは黄奇人です。彼の仮面の謎も判明します。全部、黎深が悪い!そして、それを黙認することになってしまった悠舜も罪は重いぞ~。
![]() | 彩雲国物語隣の百合は白 雪乃 紗衣 角川書店 2007-11-01 by G-Tools |
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彩雲国物語 白虹は天をめざす
- 2007年10月 4日 22:37
- FTとSF
花を返上して藍州へ帰った楸瑛を追って劉輝までもが藍州へ。お供は婚前旅行の十三姫と邵可様。事態が急変以上に驚いたのが、よく紅家の叔父さんが黙っていたなということ。もちろん出発前に邵可が頭を撫でていったにちがいありません。一足送れて、秀麗も燕青とタンタンをお供に藍州へ向かいました。出発前の紅家の庭における燕青と静蘭のやり取り、面白すぎ。ラストの燕青とタンタンのやり取りも面白いですが、それと対比して遜色ない演出だと思いました。ホント、燕青って格好いいんだから!
藍州に戻った楸瑛を待ち受けていたのは、龍蓮と義理姉でした。それまでにもチラリと匂わしてありましたが、楸瑛が女性に満遍なく優しいのは、誰にも本気になっていないから。その原因が義理姉への慕情だったわけですが、帰ってきた地点で楸瑛は、義理姉への想いが思い出になり、珠翠へ本気になっていることを自覚します。長かったけど、やっとフラグが立ったか、と思ったのも束の間で、肝心な珠翠は、どこまでも邵可様一筋。
「あーっ!!あんなところに邵可様がっ!!」
これにはマジで大爆笑。身も蓋もない楸瑛に一同唖然。でも、それだけ状況はせっぱ詰まっていて、楸瑛も格好を付けてる場合じゃなかったわけです。形振り構わず自爆した楸瑛ですが、その成果は空振り。まだまだ試練は続きそうです。
一方、劉輝も秀麗に勝負を持ちかけました。旅の中で「王であり続けること」を選んだ劉輝。秀麗が官吏としての自分を一番にしている限り、どう頑張っても劉輝に勝ち目はなさそうですが、そこは乙女系ファンタジーですから、きっと打開策があるに違いない。恋愛成就もいいけれど、官吏の頂点に立つ秀麗もいいなあと思うんですよね。
双花菖蒲のひとり、楸瑛は答えを出しました。次はいよいよ迷子くんの番ですね。彼は養い親への柵をどうやって超えていくのか。今回王都に居残った静蘭がどう布石を打っているのか、次作が見物です。こうしてみると、やっぱり静蘭って貧乏くじ体質?類は友を呼ぶにあやかって、紅家には能力を持った似たもの人材が集っています。
![]() | 彩雲国物語白虹は天をめざす 雪乃 紗衣 角川書店 2007-08-31 by G-Tools |
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彩雲国物語 青嵐にゆれる月草
- 2007年10月 3日 21:37
- FTとSF
御史台で一歩を踏み出した秀麗に与えられた仕事は、もちろん雑用から。とはいっても新人官吏の時のいじめとはひと味もふた味も違っての「正式な」お仕事です。お供は見習い御史の蘇芳ことタンタン。初め冗談かと思ってましたが、蘇芳というよりタンタンの方が圧倒的になじめるキャラです。彼は秀麗に「世間の常識」を教えてくれる貴重な存在です。これまでの秀麗はなんだかんだ言っても静蘭がガッチリガードしてて、そういう方面にテンで疎かったですから、秀麗がもまれて歩き出すにはちょうどいいコンビになりました。
日常業務に慣れて来た頃、大きな仕事が秀麗に舞い込みます。秀麗にしかできないと断言されたお仕事は、後宮での替え玉。しかも王様のお后候補として藍家が送り込んできた十三姫の身代わりというのだから、嫌が上でも秀麗の顔が引きつります。引きつったのは、秀麗だけでなく、劉輝と楸瑛もです。先送りしてきた問題が、十三姫が送り込まれてきたことによって噴き出してきたのです。
周りの事情は事情として、秀麗はキッチリ仕事をこなすべく奮闘します。天敵、清雅に大きな顔をされないよう、秀麗はそれこそ頭も身体もフル回転。周りが凍り付くという秀麗と清雅のやり取りは、なかなかの見物です。これまでにない嫌われ役なんだけど、彼には彼の信ずる道があるようで、この先どう出てくるのか楽しみ。
この巻で一番嬉しかったのは、燕青の再登場ですね。初登場こそ紅家の門前に行き倒れという締まりのない状態でしたが、それ以降は、いつもカッコイイ。今回も牢屋で再会と場所はちょっとアレですが、それ以降は、めちゃめちゃ格好よかったです。ホント、オトナでイイオトコなんですね。
![]() | 彩雲国物語―青嵐にゆれる月草 雪乃 紗衣 角川書店 2007-03 by G-Tools |
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彩雲国物語絵巻
- 2007年9月 3日 22:37
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TVアニメ第一シリーズの公式ガイドブックという位置づけで、まんまそのとおりです。彩雲国物語の人物関係、国家の組織図、彩七家の家格差と位置づけなどなど、相対関係がわかりやすく図解してあるので、登場人物の因果関係や地位的関係がよくわからない!という人にはオススメです。原作本をしっかり追いかけて、その他諸々の関係図が理解できてる人には、なくても大丈夫なアイテムかな。キャラ紹介や解説はかなり詳しく書かれているので、ファンブックとしても十分通用します。
私の購入目的は、原作者書き下ろしの短編小説「天女の羽衣」です。ホント、短編。内容は、表表紙を挿絵にしたものです。時期は、秀麗が後宮に入って、劉輝が「王」として会う前日。この時のやりとりが劉輝に「王」として秀麗に会う決意をさせます。本編やアニメでもそのあたりは十分描かれていると思うのだけど、より劉輝よりのお話です。
面白どころとしては、本編やアニメで「これってどうよ?」とツッコミたいシーンや設定を臆面もなく取り上げているところでしょうか。「彩雲国七不思議」として堂々と紹介しています。元がファンタジーでライトノベルだから、深い追求はせずにサラリと流して楽しむファンも多い中、敢えて取り上げたところに敬意を表します。
中身は本当に第一シリーズのみなので、原作ファンとしてはちょっと物足りないですが、このクオリティで第二シリーズのガイドブックも是非作って欲しいです。
![]() | 彩雲国物語絵巻 彩雲国広報局 角川書店 2007-08-31 by G-Tools |
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鈴蘭の咲く頃に
- 2007年8月30日 21:37
- FTとSF
もはや恒例となった、「ザ・ビーンズ」に掲載される彩雲国物語の外伝の今回の主人公は、なんと清苑公子の母君でした。清苑が茶州に遠琉となった事件の顛末が描かれています。本編でも清苑の母は美しい女性だったと書かれていましたが、今回は、「その類いまれなる清麗な美貌から」と具体的に記され、それが「鈴蘭の君」の呼ばれる由来となっています。
清苑が縹家の罠にはまって流罪になったことは、それまでにも匂わされていましたが、「鈴蘭の咲く頃に」ではっきりしたわけです。しかも依頼主まで。清苑の頭脳明晰さは、父親譲りでなく、母親譲りだったのかも。特に黒いところが。劉輝が「甘ちゃん王」と言われるのも、素地の違いかしらねえ。その劉輝との微笑ましい場面もたくさん出てきます。
しかし、今回のダークホースナンバーワンは、旺季ですね。本編では、秀麗の反対派でもしや黒幕か!?と思っていた彼ですが、大ハズレでした。こうなると気になるのは、先代黒狼から先王へ、そして先王から清苑、劉輝、旺季の手へと渡っていった紅豆のお手玉です。3人を繋ぐ重要なアイテムだよね。
いずれは、外伝の第3巻として収録されるとは思いますが、本編の進行具合によっては、大幅な改訂もあるわけだし、やっぱりリアルタイムで追っておいてよかった。今月末に発売になる新刊「白虹は天をめざす」にどの程度絡んでいるのか、すごく気になる。縹家対決も含めて先が楽しみです。
![]() | The Beans (ザ・ビーンズ) 2007年 09月号 角川書店 2007-07-26 by G-Tools |
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やさしい竜の限定本
- 2007年5月16日 23:23
- FTとSF
「やさしい竜の殺し方」が角川ビーンズ文庫から再販されたのとコミックの発売とを記念して企画された全員プレゼントが到着しました。小冊子ながらも表紙のカラーがきれいです。全プレの目的は、もちろん津守時生の書き下ろし小説「つらなる竜の愛し方」です。
「つらなる竜の愛し方」は、ビーンズ文庫第6巻に続く内容です。6巻の「たのしい竜の出会い方」に登場したドラゴン・オーブの守である四長老の関係を知っていないと楽しめないかもしれません。知らなくても、アークとウルのらぶらぶ漫才は健在ですが。いつもながらお熱いですよ。
「つらなる竜の愛し方」の舞台は、幻獣たちの故郷・陰界です。地竜マザランが危篤になり、次代の長老を選定する必要ができたため、成り行きでアークがウルたちに同行します。ウルの駄々っ子モードを制するのはアークだけだから。オーブの洞窟を訪れたウルは、臨終の床にあったマザランに長年の感謝を込めて祖霊憑依魔法を発動させ、彼の父炎烈王セファイドを呼び出してくれたのでした。いくつになっても親は親であり、子は子のままであることを強く感じさせる再会です。あまり語られることのなかった不動のマザランの想いがよく伝わってきました。その後の一悶着は、アーク対メシエの第二ラウンドです。
老いてもなお往年の美貌をとどめるドラゴンの化身と、どんな美女も顔色を失うと謳われる美貌の聖人が、優しく微笑みながら優雅に罵倒し合う。
長寿のドラゴンでさえ背筋を凍らせたふたりの戦いがこの物語の最大の見せ場でしょう。アークの本性全開で、読んでて楽しい、楽しい。ウルとラブってるアークもステキですが、やはり彼の魅力は戦っている時でないとね。
そして最後のびっくり箱は、ウルのお父さんでした。竜にも引きこもりってあるんですね。しかも女嫌い。裏を返せば、男OK。ウルの嗜好は血筋です。その大元は、やっぱりご先祖様に行き着くわけで、どこまでもお騒がせな炎烈王というオチでした。

やさしい竜の限定本と絵はがきのセット
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彩雲国物語 緑風は刃のごとく
- 2006年9月30日 21:38
- FTとSF
前巻「紅梅は夜に香る」で謎の人物だった高位の官吏の正体がほぼ判明。秀麗にとっては味方半分的半分といった微妙な人達です。明らかに敵-邵可に言わせれば、好敵手か天敵-となる人物も登場してますます秀麗の周りは賑やかになりました。が、反対に劉輝の周りは寂しくなっていきそうな雰囲気で我慢ばかりしている彼がちょっと哀れです。いかに悠舜が宰相として側にあるとはいえ、双花菖蒲の代わりにはなりませんからね。まあ、永遠の別れにはならないでしょうが、初期キャラの出番が減ると寂しいです。
頑張る秀麗はこれまでそのガンバリを否定されたことがないという、非常に幸運な人でした。それが今回は見事に否定されます。「正義を口にしたいなら官吏をやめろ」「何かを成し遂げたければ、相応の位につくまで理想を捨てろ」秀麗のこれまでを真っ向から否定する言葉が彼女に投げられます。反論できないけれど、真っ向から受け止める覚悟を決めた秀麗。しかし、ああいう部署は…ハッキリ言って性格歪みますよ?私は普通の監査だけでも懲りたもん。吏部とは違う意味で人間性を改造されそうです。
そんな土壇場に追いつめられた秀麗が秀麗であり続けられるよう側にいてくれることになったのがタンタン。静蘭の裏の面をかなり垣間見ることになった気の毒なお坊ちゃまですが、最後の一線を見極める能力を持ってる彼が、それこそ最後の一線を秀麗が踏み外さないよう力を添えて官吏の道を共に歩んでいくことになるのでしょう。賢い影月とは正反対の相棒を得て秀麗は官吏続行です。
![]() | 彩雲国物語―緑風は刃のごとく 雪乃 紗衣 角川書店 2006-09-30 謹慎が解け、ヒラの官吏(冗官)として王城に復帰することになった紅秀麗。しかし彼女を待っていたのは、「一ヶ月以内にどこかの部署で使われなければクビ」という冗官たちへのキツイ解雇宣告だった!!「官吏でありたい」と頑張る秀麗だったけど、他のダメダメ冗官たちの面倒まで見るハメになり!?期限付きの難題に、秀麗の底力が炸裂!? |
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チョコレート工場の秘密
- 2006年9月20日 10:40
- FTとSF
チャーリーは、一年に一度、誕生日の時に一人で食べていい板チョコを買ってもらえるのを楽しみにしている貧しい少年です。そこけ舞い込んだ「ワンカのチョコレート工場」からの招待状。ネタ晴らしをしてしまうと、チャリーが手にしたチョコレートは三枚あって、最後の一枚が招待状を含んでました。エネルギー消費を押さえるためにゆっくり歩いていたから見つけた銀貨で買ったチョコレートです。ともあれ、世界中から選ばれた5人のひとりとしてチャーリーは祖父のジョンを付き添いに2月1日にチョコレート工場へ招待されます。
チョコレート工場といっても、作っているのはチョコレートだけではなく、子供心に「あったらいいな」と一度は思ったような夢のお菓子がたくさんあります。味のなくならないガムとか溶けないアイスクリームとか。まさに夢のお菓子。
さて、招待をもらった子どもはチャーリー以外の4人は現代っ子を代表したような嫌なタイプです。最初から嫌な子どもとして書かれていて、工場の中で起こった最初のハプニングで、先が予測できてしまいました。このあたりは純粋な子ども時代ならワクワクして読めたのだと思うのですが、如何せん私は既にひねた大人。そして物語は予想通りに進んでしまったので、個人的には、韻を踏んだ歌とか名前の訳の関連性とか、物語とはあまり関係ないところに目がいってしまい、ストーリーを楽しむことはできませんでした。だからといって面白くないというわけではありません。読む年代、時を選ぶ作品だと思います。
![]() | チョコレート工場の秘密 ロアルド・ダールコレクション 2 ロアルド・ダール クェンティン・ブレイク 柳瀬 尚紀 評論社 2005-04-30 チャーリーが住んでいる町に、チョコレート工場がある。世界一広大で、世界一有名なワンカの工場。働く人たちの姿をだれも見たことがない、ナゾの工場!そこへ、五人の子供たちが招待されることになった。招待状の入ったチョコレートは、世界にたったの五枚。大騒ぎになったけれど、チャーリーには望みがない。貧しいチャーリーがチョコレートを口にするのは、一年に一度、誕生日に、一枚だけなのだから…。 |
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彩雲国物語 紅梅は夜に香る
- 2006年9月 5日 21:38
- FTとSF
待ちかねた新章スタートです。舞台は前巻までの茶州から一転、王都へ帰ってきました。前が彩八家のうちの茶家なら、今回は同僚の実家「碧家」が大きく絡んでくる展開です。まだ確定じゃないけど、今回の事件の絡み具合からしてたぶんそうではないかという私の予測。王都で起きた事件はカタがついたけど、秀麗はイイトコを全部監査機関に根こそぎもっていかれてしまい、詰まるところただ働きみたいなものです。まあ、その頑張ってる過程を王をはじめ双花菖蒲に宰相たち上層部が知ってますから最悪の事態にならないよう手は打ってくれると思います。というか、打たなきゃ、秀麗が官吏を退官させられてしまうので話にならない。もっともどれほど苦境に立たされようが、彩雲国の歴史が「文に李紅あり」と刻んでいる以上ひっくり返ることはないと思いますが…。
茶州であれだけ暗躍して王都でももったいぶって登場した縹家は今回全く登場しませんでした。王都に帰るし珠翠のこともあるので絶対縹家がメインに出てくると思ってたんですよね。とはいえ、表面上解決した事件もトカゲのしっぽ切りの状態にすぎませんから、最後まで読んでみないとわかりません。個人的願望がだいぶ含まれてますが、早く燕青に出てきて欲しいよお。たぶん彼の代わりと思われる蘇芳ではやっぱり役不足…黒静蘭のためとはいえ、残念な新キャラです。
ラストは秀麗の「えええええ…!」という雄叫びで終わってますが、さて、彼女に何が起こったのか。辞令を見ての反応なので次の任官が決まったのでしょうけど。さすがに任官は許されたものの俸禄はゼロってことないよね?秀麗には官位最下位よりそっちの方が絶対に堪えるだろうから。気になる運命は、今月末に発売される「緑風は刃のごとく」までお預けです。
![]() | 彩雲国物語 紅梅は夜に香る 雪乃 紗衣 角川書店 2006-08-31 任地の茶州から王都へ帰ってきた、彩雲国初の女性官吏・秀麗。しかし久々の故郷に喜ぶ間もなく、彼女はある出来事の責任をとるため、高位から一転、冗官として再出発することに! しかも、一時登城禁止を言い渡された秀麗は、街で自分にできることを探し始める。周りの皆に見守られつつ、ガンバル秀麗だけど、突然ヘンテコな貴族のお坊ちゃまに求婚されて!?またもや嵐が!? |
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ソレマンの空間艇
- 2006年7月19日 09:08
- FTとSF
21世紀にもなってSFがSFとしてのジャンルを確立した今となっては「空想科学小説」でジュブナイルなんて珍しくもないですが、「ソレマンの空間艇」が発表された当時は非常に画期的なことでした。それでも元のタイトルは「大地底」と宇宙とは無縁な書き方がしてありました。確かに、地下にも潜るんですけどね。UFOが未確認飛行物体と表記されている時代ですから、地底にも潜る方に重きを置いたタイトルなのかもしれません。
浅間山で出会ったソレマン人は、4万年前に種の寿命が尽きかけて地球を脱出した地球の生命体の子孫です。なぜ4万年前に区切っているかも結構重要なポイント。隕石落下の大災厄もうまくひっかけてあるんです。文明に栄枯盛衰があるように種にも寿命があることを発端にした非常に斬新な物語です。けれども、そういう哲学的なことは今でこそ理解できる話であって、ターゲット層の子供には単純に宇宙と地底との冒険物語を楽しんでもらえたらいいのではないでしょうか。
宇宙では謎の生命体との追いかけっこを、地底ではソレマン人のかつての栄光を担った巨大な頭脳コンピューターとの対話など、難しい理屈抜きで文夫少年と同じくワクワクしてもらえれば十分です。SFを知るだけで浅間山ひとつにしても見る目が変わってくるでしょう。
<作品データ>
【タイトル】ソレマンの空間艇
【作者】石川 英輔
【出版】評論社 1993-07
【内容】浅間山の火口で、4万年前に地球を脱出したソレマン人の末裔と遭遇した、文夫少年と山波先生。宇宙艇に捕われた2人に「驚かせてすみませんでした」という声が聞こえた。そして想像を絶する大宇宙旅行は始まった。心踊る興奮と感動の傑作SF。
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時空ハンターYUKI
- 2006年3月 5日 23:39
- FTとSF
あさのあつこさんとくれば、「バッテリー」が超人気ですが、実は、私、「バッテリー」は読めませんでした。読もうと努力はしたんですが、そもそも現代野球ものというところで、いやーんな予感。苦手というか、馬が合わないというか…。そして、その後の人気作品もことごとく私的にはハズレ。しかし、ついに読める作品に当たりました!
女の子が主人公で、SFオカルトタッチの「時空ハンターYUKI」は、あさのあつこさんのいつもの作風とかなり違っていると思います。なので「バッテリー」系の作風が好きな人にはどうなんでしょ?私は戦う女の子大好きなので、こういう作品大歓迎!人間に災いをなす闇の蔵人を倒すために選ばれし星の娘というのもワンパターンですが好きです。そして、闇の蔵人を倒せる武器が、金と銀の刀ですよ。ツボ揃いまくり。
1巻は現代が舞台で、2巻が江戸時代。時間軸が離れているのは、闇の蔵人と星の娘の関わりを描く都合上のようです。系図のたどれるヒロインふたりに共通しているのは、「ゆき」という名前です。性格は、似てるような似てないような。性質はそっくりだと思います。血筋ですもんね。物語はまだまだ序盤な感じなので、これからじっくり楽しめそうです。あと、児童書なので、挿絵が多い。イメージどおりの絵なのでサクサク読めました。
![]() | ![]() | 時空ハンターYUKI (1) 〈2〉 あさの あつこ 入江 あき ジャイブ 中学1年生の引っ込み思案な“結祈(ゆき)”は禍々しいオーロラを見たことをきっかけに「時空の狩人」としての戦いにまきこまれ…。(第1巻より) |
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緑の守護神-アナトゥール星伝〈上〉(下)
- 2006年2月23日 22:27
- FTとSF
折原みとさんの「アナトゥール星伝」シリーズがついに完結しました。15年で19巻。この間に漫画家としての折原さんの作品もいくつか読んでましたので、緑の守護者(上)が悲壮な終わり方をしててもあまり心配していませんでした。そして、その予想は裏切られずに終わりました。
![]() | ![]() | 緑の守護神(ガーディアン)〈上〉 緑の守護神(下) アナトゥール星伝(18)(19) 折原 みと 講談社X文庫 |
ひとくちに言えば、図書館で見つけたアナトゥール星伝という本を見つけた結奈が、予言者ルマイラによって創られた世界アナトゥールに召喚され、エスファハンの王子シュラと恋しながら世界を救う物語。しかし、平和な時代に育った結奈にとって戦まっただ中のアナトゥールはカルチャーショックだらけの世界でした。ファンタジーのお約束で、結奈は、救世主として人々からあがめられる存在です。だからといって、特別な力があるわけではありません。ただ、少しばかり現代の知識はありました。頼りないながらも自分の意志で歩き出した結奈の成長物語です。
最終話である「緑の守護者」では、アナトゥール滅亡を前にして、これまで出会った人々が全員エスファハンに集結します。ルマイラの予言では、救世主の命を捧げて世界の再生を図るとなってますが、「結奈を犠牲にする世界など滅んでしまえ」とシュラが叫ぶなど、激情的なシーンがチラホラと。世界の滅亡というネタは「果てしない物語」と被るものがあります。なので解決策もなんとなく予想できて、特に奇をてらったものではありませんでした。上巻で予測された願いが、非常にわかりやすい形で実現していきます。親友・沙夜や両親の出現も、「ああ、やっちゃったな」と抵抗なく読み進めました。ヒロインに都合よすぎ!ともいえる展開ですが、版元がティーンズハートですから、読者の期待を裏切らないエンディングでないとね。15年にも及ぶ連載で、読者のターゲットを誤らない終わり方だと思います。
下巻では、滅亡に瀕した世界を救うという大きな柱とともに、それまで登場した人物達のその後が細やかに書かれてるのも嬉しい配慮でした。死別やら悲恋やらいろいろありましたが、全員、希望の持てる形で未来へ進んでいきます。個人的に好きなのは月光王ユージン・シルハーンだけど、彼が一番かわいそうかも。好きになった相手が結奈だったのが悪かった。その結奈もエピローグでは「お母さん」です。最後まで大団円のお約束を貫いてくれた作品でした。
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彩雲国物語 心は藍よりも深く
- 2005年12月21日 01:14
- FTとSF
ひたすらに待ち遠しかった「彩雲国物語」の最新刊は、ちょっと(本の厚さが)薄かったけど、謳い文句のとおり急転直下でワクワク読めました。
前作「欠けゆく白銀の砂時計」で工部攻略の終わった秀麗は引き続き全商連を落とすべく王都に逗留中。家にはなぜか龍蓮と克洵が転がり込み、秀麗は不覚にも龍連の笛を聞いて気力ダウン。と、のほほんとした始まりですが、影月の残った茶州では奇病が流行しはじめて大騒動。「時間のない」影月の取った行動は、なんていうか、これが13歳の男の子の考えることですか!?さすがは状元及第者。落ち着きすぎてます。でも、香鈴に告白したのは褒めてあげますが、そのままトンズラはないでしょう。もっとも香鈴も強くなりました。「ひっぱたきに参る」そうです。影ばかりがつきまとう影月と香鈴ですが、納得できる結末であって欲しいと思います。
茶州から事態急変の知らせを受けた秀麗の取った行動には拍手喝采です。工部や全商連との駆け引きもですが、やっぱり見所は朝議でしょう。居並ぶ高官達とのやり取りもですが、一番緊張したのは劉輝との対話でしょうか。どこまでも官吏と王とで対峙した名場面です。権力とは何か、官吏とはどうあるべきか、秀麗がとっても格好良かったです。秀麗の口調については賛否両論あるだろうけど、若さの勢いってことであの場はいいんじゃないでしょうか。終わったあとで秀麗が赤面することはあっても後悔はしないと思います。
今回一番好きな場面は、府庫で蜜柑です。ほのぼのと自然で微笑ましい。嵐の前の静けさではあるけれど、一番先生と生徒らしくって。旅立ち前の劉輝も捨てがたいですが、個人的好みで今回は絳攸に一票。秀麗の恋の行く先も気になりますが、茶州編では影月の行方の方が気になります。次回でケリが付くらしいけど、心配だ。年末は無理だろうけど、年明け早々に読めたら嬉しいです。
![]() | 彩雲国物語 心は藍よりも深く 雪乃 紗衣 角川書店 2005-09-30 |
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外伝「朱にまじわれば紅」
- 2005年12月21日 01:09
- FTとSF
今回も笑わせていただきました。まずは「幽霊退治大作戦!」から。この話は秀麗が後宮に入る前です。気になる幽霊の正体は、はじめの幽霊とあとから出てくる幽霊とでは違います。最初の書庫に出てきた饅頭大好き幽霊は、読者ならすぐわかりますよね。あとの幽霊は、「ああそうなんだ」と気になるところです。この方、彩八仙と関わりが?この後の重要な伏線のような気もしました。
「会試直前大騒動!」と「お見舞戦線異状あり?」はオールキャストものです。胡蝶姉さんの格好良さが炸裂してます。「会試直前大騒動!」は秀麗のお化粧のエピソードの裏話と兼ねてほろりとくる仕上がりです。影月の隠れた力の巻き起こす騒動があっけない終焉を迎えるところがおかしかった。みんなは脱力したでしょうけど。
劉輝の肩が持ちたくなるのは「お見舞戦線異状あり?」です。あとがきのあとの「薔薇姫」と併せて読むと、なんとも切ないです。秀麗の”叔父さん”の一喜一憂ぶりで面白く展開させてますが、秀麗個人の話に絞ると、劉輝の見せ場が多いです。亡きお母さんの思い出とあわせて今後のふたりの関係の伏線かな。父茶でお株を下げまくりの邵可ですが、ここぞというときは主導権を発揮して、存在感を出してます。このシリーズで一番渋い役どころだと思ってるんですが、この先どうするのやら。何もかもが気になる作品です。
![]() | 彩雲国物語 朱にまじわれば紅 雪乃紗衣、由羅カイリ(挿絵) 角川書店 「幽霊退治大作戦!」「会試直前大騒動!」「お見舞戦線異状あり?」「薔薇姫」 |
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『彩雲国物語 欠けゆく白銀の砂時計』
- 2005年12月21日 01:07
- FTとSF
王都組ファンの皆様、秀麗が帰ってきましたよ~。実際のところは、出張というんでしょうけど、王都に家があるから細かいことはいいっこなしね。
茶州で一区切りつけたところで舞台は王都へ。朝賀に託けての外交合戦ですよ。使える武器は多い方がいいということで影月ではなく秀麗が派遣されてきました。そこまでのやりとりが前半。頑張ってる秀麗達と官僚達で盛り上がりました。でも、最大の見せ場は、藍龍蓮がかっさらてく~。ホント、美味しい役どころですよ、お兄さん。前からインパクト強い役どころでしたが、きっとこのシーンのためだったのね。王都へ帰ってからもすごい影響力を持ってて、彼のあの名前が伊達じゃないことが証明されます。
いろいろな思惑の絡まった秀麗のまわりですが、本人はひたすらお仕事一直線。絶対に引けない覚悟でど根性見せてくれます。ああ、またややこしいシンパが増えていく~。王様、ライバル増えて大変ですね。私は、ここにきて絳攸好きになりましたよ。いじめられっ子の味方をしたくなるおねーさん気分です。劉輝も気の毒だけど、一応見せ場はもらったんだし、彼には奥の手があるから、苦労してもらいましょう。もっとも、奥の手を使ったら「おしまい」だということは一番よくわかってるのも劉輝だからかわいそうでもありますが。
王都組復活で喜んでた後に影月くんのドナドナ疑惑。ちょーっと待ったぁ!彼には香鈴と幸せになってもらうという私の計画が崩れるじゃん(誰も聞いてない)。妖しげな銀色の髪の若者も再登場するし、爺連中はアテになるのかならないのかわからない。静蘭も幸せ色が薄いかもしれないし。まあ、彼の場合は幸せの基準が他人とは違うからこっちで決められないですけど。
気になったのは、盛り上がったのは秀麗サイドだけど、今回のサブタイトルは影月くんのことを指してるのではないかということ。だって、「欠けゆく」でしょ?謎のコマが徐々に増えてきています。
![]() | 彩雲国物語 欠けゆく白銀の砂時計 雪乃紗衣、由羅カイリ(挿絵) 角川書店 |
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彩雲国物語 漆黒の月の宴
- 2005年12月21日 00:34
- FTとSF
物語的には前巻「想いは遙かなる茶都へ」の続きです。気になる朔洵と秀麗の関係もハッキリします。でも、秀麗サン、「この世で二番目に静蘭が好きよ」って、劉輝は対象外ですか?個人的に一番気になるのがそこなんですけど。ま、そこは次巻で動きがあるのかも知れません。劉輝の「余は逃げられるだけ逃げる気満々だぞ」のひとことがツボでした。本筋からは外してる発言ですが、秀麗、愛されてますね。
今回の最強は誰がなんと言おうと春姫でしょう。とってもステキな声の持ち主でした。克洵の活躍にはビックリで、まさに愛は勝つ。豪快な英姫もよかったし、香鈴の采配ぶりも素晴らしい!
個人的な萌えどころは、静蘭と朔洵の賭け。サイコロに運命を託していいのか!?でも、しっかりコントロールしてるんだよね。ふたりとも凄すぎ。静蘭の静かな怒りが剣で爆発するところが最高でした。秀麗との約束がなければ、静蘭の独り舞台になってたでしょうに。最後の締めは秀麗にバトンタッチ。朔洵も本望でしょう。
![]() | 彩雲国物語 漆黒の月の宴 雪乃紗衣、由羅カイリ(挿絵) 角川書店 |
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彩雲国物語 想いは遙かなる茶都へ
- 2005年12月21日 00:31
- FTとSF
茶州州牧に任じられた秀麗と影月は、静蘭、燕青、香鈴と一緒に茶州へ赴きます。タダでさえ危険な茶州に安穏と着けるはずもなく、途中で秀麗は単独行動を取るハメになりました。やんごとなき深窓のご令嬢ならここで途方に暮れるところですが、あいにく秀麗はそんなものとは無縁です。ましてや彼女には為さねばならぬ目的があります。彼女は自分が置かれた状況と立場を正確に捉まえ、行動に移しました。
今回登場した琳千夜なる若様は、容姿端麗なるもアヤシサ大爆発の若者です。なんたって登場のタイミングが良すぎ!そしてその予感は間違っていませんでした。しかし、単なる小物ではなく、事件の真の黒幕とはさすがに思いませんでした。若者パワーもバカにはできません。静蘭相手に威風堂々、よくやったよ…。でも相手が秀麗だから、彼の魅力は通じませんでした。一国の王様ですら袖にする秀麗の恋愛感覚を舐めちゃいけません。今回はそれに救われました。
一件落着しても、秀麗一行はまだ目的地に到着していません。むしろ勝負はこれからです。互いに正体をばらしてからが本番なのです。頼もしいのか頼りないのかわからない茶克洵も加わって旅が続きます。今回は強烈なキャラが続いたので、克洵のようにおとなしいキャラは存在するだけで嬉しかったかも。個性的なキャラが多いと凡庸な若者が貴重品に見えます。
![]() | 彩雲国物語-想いは遙かなる茶都へ 雪乃紗衣、由羅 カイリ(挿絵) 角川書店 |
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彩雲国物語 花は紫宮に咲く
- 2005年12月21日 00:30
- FTとSF
長年の夢を叶え、初の女性官吏となった秀麗は、史上最年少の状元及第者・影月と一緒に新人研修に励むことになりました。覚悟はしていたものの、バリバリの男性社会は秀麗にとって敵地にも等しい場所です。それでも秀麗は矜持を高く持ってやり抜くしかありません。執拗なイジメにも負けず、秀麗は頑張り通しました。単に根性があるだけでは無理。才能と才覚と運とを併せ持っていなければ乗り切る事は不可能でした。
その一方で、見守るだけというのも辛いものです。今回静蘭は出番がほとんどありませんでした。静蘭の役割を担ったのは劉輝です。確かに腕の立つ用心棒ではありますが、秀麗にとって安心できる家人は静蘭ただひとり。切ないですね。でも、それは秀麗が官吏を目指したときからわかっていたことです。だから静蘭も心を決めました。王の配慮もあって、武官に静蘭、文官に燕青。秀麗は本当に恵まれてます。
秀麗に関わる重大事として、紅家の存在がでてきました。外野がなんと言おうと秀麗が紅家の長姫である事実は強力な武器になります。そのエピソードをしっかり織り込んで秀麗は茶州へ旅立ちました。無頼漢で登場した燕青の伏線が生きて、更に第1巻で亡くなった茶太保にも関わりを持たせて。単発で登場するキャラにもこれからは要注意です。その場限りで終わるほど単純な構成ではなさそうですから。
![]() | 彩雲国物語―花は紫宮に咲く 雪乃紗衣、由羅カイリ(挿絵) 角川書店 |
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彩雲国物語 黄金の約束
- 2005年12月20日 23:35
- FTとSF
「彩雲国物語-黄金の約束」は、前作からひと季節後の真夏から始まります。彩雲国の夏は厳しいらしく、夏バテと超過勤務で次々と朝廷の官吏がダウン。吏部侍郎・絳攸の策略兼計らいで、秀麗は男装して朝廷で下働きのアルバイトをすることになりました。後宮の次は男装ネタではあまりにもお約束すぎる!と思ったのですが、遠大な計画への第一歩として絳攸が打った手なので正当な理由付けがあとから付いてきました。
今回、新キャラがいろいろ登場しますが、イチオシの変人は絳攸の養い親兼上司の紅尚書です。次は秀麗のアルバイト先で上司になる黄尚書。両人とも社会的地位も名誉も経済力も備わった人物ですが、あまりに個性的すぎて周りがついていけません。ふたりに比べると地味な燕青も、静蘭の昔を知ってる曰くのありそうな無頼漢。秀麗の周りはますます賑やかになってきました。
アルバイトとはいえ、朝廷に出仕するとなれば劉輝との接触が気になるところですが、これまた秀麗からバッサリ切られてます。秀麗が後宮から去った後、劉輝はラブレター作戦に出ますが、あまりにもとんちんかんすぎてマイナス効果。けれども政策でその失態を取り返します。秀麗の夢を叶える布石の第一歩として、国試女人受験制を取り入れさせたのでした。劉輝は本当に辛抱強く秀麗を待っています。
お楽しみのアクションシーンは今回も健在です。静蘭、楸瑛、燕青、劉輝のカルテットで豪勢に大活躍。元凶は燕青ですが、それすらも実は今後の伏線に使われています。お騒がせな話ながらも実によく練られているんです。シリーズものに必須である構成力が素晴らしい。読むほどに先が楽しみになってきます。
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彩雲国物語 はじまりの風は紅く
- 2005年12月20日 23:32
- FTとSF
久しぶりにハマれる作品に出会いました。「彩雲国物語-はじまりの風は紅く」は、最初は逆ハーレムをアレンジした後宮ものかとあまり期待せずに読んだのですが、中身は全然ちがっていました。ファンタジーっぽく始まって、恋愛風味かと思えば陰謀が漂い、アクションで締めて、主人公・秀麗の成長物語へとつながっていきます。その意外性と構成力のうまさで最後まで一気に読ませられました。
秀麗は貧乏ながらも名家のお嬢様でしっかり者というところを見込まれて昏殿・劉輝の教育係を頼まれ紅貴妃として後宮に入ります。王は男色家なので夜の心配はナシ、という触れ込みでしたが、秀麗に心を開いた劉輝は夜ごと訪れる始末。もっとも肝心な進展はなかったわけですが、秀麗の乙女心は複雑です。なにもないけれど、とにかく微笑ましい。それが秀麗誘拐事件で一変します。これまでの伏線が一気に開放されて、出てくる出てくる新事実。だいたいは予想の範囲内でしたが、黒狼だけは全然予想できませんでした。でも、一番美味しい役どころかも。二面性を持ったキャラは大好きです。
事件が一段落して、これが恋愛小説ならめでたしめでたしで終わるところですが、秀麗には最初からその気が全くありません。劉輝に全然心惹かれていないわけではなさそうですが、彼女が目指しているのは官吏。劉輝との出会いは、その後、彼女の夢を実現させるための分岐点になります。陳腐な言い方を借りれば、「はじまりの風は紅く」は、ロマンスから始まる成長物語の、文字どおり出発点なのです。
![]() | 彩雲国物語―はじまりの風は紅く 雪乃紗衣、由羅カイリ(挿絵) 角川書店 |
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英雄伝説III白き魔女
- 2005年10月19日 17:57
- FTとSF
毒を喰らわば皿までに従って買ったのが小説版「白き魔女」です。なぜわざわざ小説版と断っているかと言えば、オリジナルはPCゲームだから。私のゲーム暦の中でも1,2を争う秀逸な作品が「白き魔女」です。関連したものならば集めなければならないファン心理で購入したのが本書でした。
![]() | 英雄伝説III白き魔女―小説 堀 慎二郎 宙出版 2005-07 |
ゲームの原作本がオリジナルと異なる展開をみせてくれるのはよくある話です。私は小説が面白ければ否定しません。「竜機伝承」などは本の方が面白かったクチですし。しかし、本書に関しては、うーんと唸らなざるをえないでしょう。デキが微妙なんですよ。ゲームどおりの世界観なんですが、ここでそれを言っちゃダメだろ!みたいなところがありまして(^^ゞ
物語はジュリオとクリスが故郷の伝統に従って巡礼の旅に出て、事件に巻き込まれて世界を救う、と一貫してます。ゲーム中に出てきたサブエピソードをなぞっての筆運びもあってるんですが、旅の面白さとか脇キャラとの絡みが欠けてるんです。プレイキャラと一緒に旅を楽しむというゲームの醍醐味が本ではバッサリ切られてます。ページの制限はあったでしょう。しかし、キャラの魅力をはぶいて物語をなぞったのでは意味がないと思うんですよ。ゲームエピソードにこだわらず、少年少女の冒険物語にした方がよかった。
キャラで必要以上に描かれてるのが女王イザベラです。彼女については、言いたいことはわかります。が、ゲームの中で明らかにされていない部分をここで語る必要はない。しかも、最後でくどいくらいに説明してるから興ざめ。続編が書けるとは限らないからかもしれないけど、そのためにジュリオとクリスの物語から離れてしまった感が強いのです。たぶん、作者がイザベラに入れあげちゃったんでしょう。気持ちはわかるけど、「白き魔女」でやってはいけません。なので、本書を読むなら、ガガープ三部作をクリアしてからにしましょう。
ストーリー重視でPCゲーム初心者に自信を持ってオススメできるのが「白き魔女」です。PS2などでバリバリにゲームしてる人には地味な作品ですが、人の優しさを実感できる秀作です。
![]() | 英雄伝説III 白き魔女 新パッケージ版 日本ファルコム 2004-10-28 PSP版英雄伝説ガガーブトリロジー白き魔女もあるけど、同じ遊ぶなら絶対にPC版がオススメ! 攻略サイトもあります |
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宇宙のスカイラーク号
- 2005年10月 2日 07:16
- FTとSF
既に東京創元社版で持っている本だけど、小中学生向けに私好みの挿絵がたくさん入っているという理由だけで買ってしまったのが岩崎書店版の「宇宙のスカイラーク号」です。
![]() | 宇宙のスカイラーク号 エドワード・E. スミス Edward E. Smith 亀山 龍樹 岩崎書店 2004-10 |
原作バージョンとの一番大きな違いは、ヒロインのドロシーが、シートンの婚約者から妹に変更されてる点です。これで研究に没頭してドロシーの両親との食事会をすっぽかしたり、シートンとドロシーの結婚式などのエピソードが都合よく省かれてしまいました。ドロシーが仕切るエピソードだっただけに非常に残念だけど、小中学生向けに編纂されてるから仕方ないのかもしれません。岩崎書店のシリーズはあくまで有名どころのSF作品をわかりやすい全集として発行した物だから、これで興味を持った作品は、一般向けの本を探して読んでねってとこでしょうか。複雑な登場人物の背景をばっさりカットして、主人公の冒険物っぽく仕上がってるので、対象年齢の男の子が感情移入しやすくしてあるとは思います。でも、女の子ターゲットなら掠われた婚約者を助けに行くシチュエーションの方がいいと思うんだけど。
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新・特捜司法官S-A
- 2005年7月18日 13:18
- FTとSF
特捜司法官S-Aが帰ってきた。ジョーカー本編の最終話「ファイナル・ミッション」から数年後に舞台を移して、新シリーズとしてスタートです。
![]() | 新・特捜司法官S-A―ジョーカー外伝 (1) 麻城 ゆう 新書館 ジョーカー・シリーズ 漫画文庫4巻+ファイナル・ミッション 特捜司法官S-A―ジョーカー外伝 全2巻 |
超人気TVドラマ「特捜司法官S-A」で主役を演じる秋津秀のもとに、岸方セドナという少年が付き人にしてくれと言ってくる。俳優志望かと思いきや、彼は、行方不明になった女優志願の姉を探しているのだという。事件の裏に「ネオ・ヒューマン」と呼ばれる存在、そして彼らに憧れる若者達を食い物にしている組織の影が……!!人間でありながら、特捜司法官のような銀色の人口眼球を持つ男、秋津秀の新たなる冒険がはじまる!
その役柄だけでトップスターの地位を維持している男優・秋津秀。そして、その役柄ゆえに関わりを持つことができた本物の特捜司法官S-Aとの共同捜査。生身の人間である秋津にできることはわずかですが、芸能界の経験と勘が彼を助けてくれます。今回の事件も然り。S-AとS-Qが苦労して掴んだ敵の手口をあっさり看破して捕り物に参加です。S-Aの憮然とした心情が楽しい。感情がないと言われる特捜司法官ですが、私には彼らの方がよほどか人間らしい思いやりを持っているように思えます。
「ファイナル・ミッション」後なので、いつも助けてくれるリィンは登場しません。どういう状況かは話題に出ますが。ちょっと淋しい。リィンが幸せであることで良しとするしかないでしょうね。
臓器移植の環境が変わってきたこともあり、そのあたりが今回の事件に反映されてます。臓器の違法売買はいつか現実のものとなりそうで怖いです。あと若者のスタイルとダイエットクリニック。ネオ・ヒューマンは果たして本当に人類の進化した姿なのかという問題と絡めてマスメディアに作られたブームをやんわり批判してるかな。近未来SFだけあって、そのあたりの線引きが難しいですが、奥の深い問題を抱えていると思います。
30歳後半という年齢に差し掛かった秋津と10代の天才少年セドナのやり取りは、現代を見事に反映してます。でも、セドナはイマドキの感覚からすると恐ろしく古風です。一昔前の清純な美少年。こういうところが女性好みの作風なのかもしれません。
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だれも猫には気づかない
- 2005年7月 8日 18:09
- FTとSF
「歌う船」シリーズで有名なマキャフリーが、自分の孫娘のために書いたというファンタージーが「だれも猫には気づかない」です。
![]() | だれも猫には気づかない アン・マキャフリー Anne McCaffrey 赤尾秀子 東京創元社 2003-02 |
時は中世。公国の若き領主に仕えてきた老摂政が亡くなった。将来を案じた彼が遺していったとっておきの秘策、それが飼い猫ニフィのことだったとは! 賢い猫はやがて“摂政”として敏腕ぶりを発揮。領主の恋に政治的陰謀が絡まりだすとき、隠れ摂政ならどんな妙手を繰りだす? 現代SFの女王が贈る猫ファンタジイの逸品。
黒煙色の猫ニフィは、だれも気がつかないどころか、主人公ジェイマス5世公のお気に入りとして書斎や私室に陣取って目立ちまくり。ジェイマス5世から公文書を見せてもらったり、まさに亡くなった老摂政マンガンの代わりとなってジェイマス公を支えます。
彼女の出番その1は、お后選び。隣国から友好使節に混じってやってきた3人の中からニフィが選んだのは、猫好きなレディでした。ジェイムズ公のピンチを使って女性の本質を見極めさすその手腕は、猫好きでなくとも納得のいく一幕です。猫の性質に借りてますが、動物好きに悪い人はいないですもんね。
ニフィの活躍は后選びだけではありません。最大の山場は、お后の故郷で起こったお家騒動の収拾にあるのです。これがまた、いかにも猫らしい解決の仕方で。同時におとぎ話に相応しい展開でした。ジェイムズ公夫妻にも活躍の場面はありますけど、美味しいところはニフィにお任せです。
マキャフリー作品と言うことで、ハラハラドキドキ、ロマンチックを過度に期待していると肩すかしを食らってしまうでしょうが、マキャフリーは冒頭で「自分の孫娘のため」と宣言しています。普通の児童書にちょっとロマンスが入った感じの作品なので、背伸びしたがりな年頃の女の子にピッタリな物語だと思います。主人公が若き公子ってところがその証拠。素敵な王子様は女の子の永遠の憧れなのです。
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『にゃんこ亭のレシピ2』
- 2005年6月27日 13:11
- FTとSF
お手軽で美味しいメニュー再び!今回は田植えからお盆までをめぐる日々に託けて「ぺちゃんこポテト」、「ふるふるグレープフルーツジュレ」、「キャベツをたくさん食べようパスタ」が取り上げられてます。
第1巻でゴータ達の元へ引き取られたこぎつねさまのコギが、にゃんこ亭にデビュー!その最初の仕事が「ぺちゃんこポテト」作りのお手伝いでした。つまり、そのくらい子供と一緒に作れるオシャレな料理なんです。しっぽと耳の見えてるコギをお店に出してよいものか迷ったゴーダとサトルでしたが、銀杏村の不思議であっさり不安は解消。こういうところが暖かみのある話なんですよね。
実生活では畑仕事や田んぼの世話に汗水たらすゴーダの考え方やサトルの姿勢に頷けること多し。都会に生きていたふたりがいきなり自給自足なんて無理だもん。「なんでもボチボチでええ」というサツオに感謝の日々です。農業って地味だもんなあ。自然に親しむといえば聞こえはいいけど、その大変さは家庭菜園だけで懲り懲りが私の本音です。
今回の最大のイベントは第3話のお盆でしょう。銀杏村の不思議が一番よく現れている話です。魂のお迎えと見送り。惜しんでなくなった人には誰だって会いたいもの。生者と死者との理想的な関係が描かれています。しかし、幽霊さんとパスタを食べるってのがなんともユニーク。洋食亭らしきエピソードにクスリ。今回も美味しく読めた本でした。
![]() | にゃんこ亭のレシピ (2) 椹野 道流(著) 山田 ユギ(挿絵) 講談社 銀杏村で暮らしはじめたゴータの日々が緩やかに流れていく。銀杏村は不思議の村。妖しが人と共に生きている村。風に、雲に、雨に、闇に。銀の雨の降る水無月。苗代に早苗の翠映り、河原に蒼く蛍舞う。日々を重ねて文月、葉月。やがて亡くなった祖母の新盆がやってくる……。銀杏村で生きるゴータの、穏やかで、どこか懐かしい、不思議の日々、はじめての夏。 |
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『にゃんこ亭のレシピ』
- 2005年6月 5日 10:08
- FTとSF
本を読むついでに素朴な料理のレシピもゲットできます。1冊で二度美味しい本が椹野道流さんの「にゃんこ亭のレシピ」です。
![]() | にゃんこ亭のレシピ 椹野 道流 講談社 white heart |
銀杏村は奇妙な村だ、と言う人がいる。妖(あやか)しが、いたるところにあたりまえに生きている村。風に、雲に、木々に、光に?間の隣に、ごく自然に存在している村。東京に住むゴータの元に、ある日、届けられた1通の手紙。それは祖母が亡くなったことを報せるもの。そして同封されていたのは、銀杏村に遺された彼女の家の鍵だった。祖母の家で暮らしはじめたゴータの、穏やかでどこか懐かしい、春夏秋冬、不思議の日々。
にゃんこ亭は通称で、正式な名前は「ロティサリー・ドゥ・シャ(猫のロティサリー)」です。長靴を履いて後ろ足で立ち上がった黒猫が、たき火の上で棒に刺した丸鶏をグルグルと回しながらローストしているユーモラスな看板が目印なレストラン。でも銀杏村の人々には横文字(フランス語)の名前が難しすぎて、隣人のフデコが看板の絵から思いついた「にゃんこ亭」がそのまま呼び名になったのでした。ついでにメニューも昼定食に夜定食と勝手に呼ばれてます。いかにも素朴な村らしい、でも、暖かみのある発想でした。
銀杏村は人口の少ない過疎の村だけど、なぜか人の絶えない村。それはゴータのように「村に呼ばれた」人が都会から集ってくるからです。人の縁の不思議さと暖かさとがほどよく紡がれています。
ゴータもそうだけど、作品の登場人物のほとんどがカタカナ名です。元銀行マンの和尚さんが郎唱で漢字名ですが、居候兼パティシェはサトル。このあたりがお伽噺っぽい雰囲気を出してます。お伽噺、メルヘン、言い方はいろいろありますが、そういう世界観のある物語です。そこに料理という現実が持ち込まれて都会的なセンスも持ち合わせている。和尚とゴータとサトルが好青年なので、イマドキの乙女心にもヒットしてます。
美貌のおきつねさまが出てくるあたりになると、もはや妖しが日常化しても驚かない。そのおきつねさまが子供を産んで、ゴーダとサトルがその子供の養い親になるところで本書は終わり。おきつねさまの出産に右往左往する三人組が楽しかった。表紙の女の子はたぶん、その子供のイメージでしょう。表紙になってるくらいだから女の子もメインだろうと思っていたら、登場は最後でした。でも、続刊されてるのでこれからの活躍が楽しみです。スリーメン・アンド・ベイビー(和尚・談)のノリで楽しめそうな予感がします。
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タイムスリップ釈迦如来
- 2005年3月26日 22:42
- FTとSF
女子高生麓麗(ふもとうらら)のタイムスリップシリーズ第三弾は、現代日本から古代インドへと時空を飛んでいきました。
![]() | タイムスリップ釈迦如来 鯨統一郎 講談社 2005-03 タイムスリップシリーズ第三弾 |
ブッダはオカマだった!?老子からソクラテスまで世界最高の叡知を巻き込んで、インドの一ローカル宗教だった仏教が、世界宗教となるまでを描いた、人類史上初「哲学的バカミス」遂に誕生!
帯のタイトルが「神も仏も畏れぬ鯨統一郎の快進撃!」とありますが、まさにそのとおり。敬虔な仏教徒が読んだらぶっ飛びます。でも、大元である仏教をそれなりに知っていないとクスクスはあってもクスリはないでしょう。そういうふうにちょっとマニアックなネタで遊んでいるところがあるお話です。
前巻「タイムスリップ明治維新」で不良娘になってしまった麗が更正のために入れられたのが吉野ダイビングスクールでした。そこの吉野先生と一緒にダイビング事故で迷い込むのが古代インド、ブッダのいる世界です。現代に戻るため、ふたりは歴史通りに仏教を世界宗教に祭り上げるべく奮闘します。二十一世紀の知識を総動員して涙ぐましい努力をするわけです。
さて古代インドにおける吉野先生の名前は「ダイバダッタ」。彼がダイビングスクールをはじめたきっかけが釈迦から啓示を授かったという至高体験からきているので、仏教にはかなり詳しい青年です。ついでに中国哲学に興味をもっていてちょっとした老子フリーク。麗の軽いノリと芸能界ネタの小出しといい、伏線は万全です。何が万全かは、最後のソクラテス勝負でわかります。この大ネタが許せれば、この本は面白かったと言えるでしょう。ネタがわからなかったら…最悪とまではいいませんが、金を返せと言いたくなるかも。そんな危険をはらんだ作品であると思います。芸能界に疎い私でも知ってるネタだったので、「ここで使うかなあ」と苦笑い。どこまでも現代っ子向けのエンターティメント小説でした。
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チックとタック
- 2005年3月25日 15:34
- FTとSF
小学校の時、大好きだった「チックとタック」の話がまた読める!それだけで即ゲットしたのが光村ライブラリーの第1巻「花いっぱいになあれ」です。
![]() | 花いっぱいになあれ ほか 光村ライブラリー (1) (監修)樺島忠夫、宮地裕、渡辺実 光村図書出版 2002-03 |
おじさんのうちのぼんぼん時計の中にはチックとタックという名前の小さな小人が住んでいます。だからぼんぼん時計はふたりの名前を呼び合って、チック、タックと音をたてているんです。チックとタックは夜中に起き出して、おじさんにいたずらしようと考えますが、台所で食べ物をみつけて美味しそうにたべはじめました。ふたりが最後に見つけたのはわさびの入ったお寿司です。それを食べたふたりは…翌日、ぼんぼん時計の音が悪いこと。ジッグ、ダッグ、にごってます。
まさかまたこの話が読める日が来ようとは思いもしませんでした。安野光雅氏の挿絵と一緒に収録されていて嬉しい限りです。たとえこれ一作だけだったとしても、この値段で買いますよ。一緒に収録されている、「だれにあえるかな」、「春の子もり歌」、「花いっぱいになあれ」、「力太郎」もそれぞれいい話でした。
想像の世界に遊ぶことのできるのが、童話、絵本の特権で、これが物語や文学を読む上での基礎になるという。エンターティメント中心に読んでいるけれど、好きになった文豪作家のきっかけは教科書に載っていた作品からというのは結構ある。高村光太郎や小川未明、泉鏡花あたりはそれしか考えられない取り合わせだ。自分の好みからまるきり外れている作品だからねえ。
今の教科書の作品がどうなっているのかは知らないが、空想の欠片もない話ばかりだったら、小学生の活字離れもわかるような気がする。こどものための教科書であることが一番だが、おとなになってからも読みたい作品であることも選定基準に入れて欲しいと切に思う。
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アダルシャンの花嫁
- 2005年3月14日 21:10
- FTとSF
ファンタジー色の薄い作品ということで読んだのが雨川恵さんの「アダルシャンの花嫁」です。
![]() | アダルシャンの花嫁 (著者)雨川恵 (挿絵)桃季さえ 角川書店 2004-11-29 第2回ビーンズ小説賞受賞作 |
英雄は恋をしない
帝国との戦に勝利した新興国アダルシャンの王弟・アレクシードのもとへ、政略結婚の相手・カストリア帝国の末姫が輿入れしてきた。けれどこの姫、まだたったの10歳で…。
私の好きな年の差カップルものだ~。でも、読んでるうちに、う~むむ。確かに年の差カップルで、最初は皇女様が乗り気でなくて、でも、だんだん心を開いてくれるような展開で。あらすじを辿ってみれば、私の萌えシチュエーションなのに、いまひとつ乗れないのは何故だろう。たぶん、ヒロインのはずのユスティニア姫に強烈な個性が欠けているんだと思います。10歳という年齢は個性の一つで、それ以外にインパクトがないんですね。アレクシードを仇と狙ってるのに緊張感が足りないというか。いえ、物語的には緊張するシーンなんだろうけど、その流れに私が乗れないんです。これはもはや相性が悪かったとしかいいようがない。
兄王ユーゼリクスとアレクシードの噛み合ってない会話や副官フラッドとのやり取りとか、局面的には面白いシーンがあります。守り役サーマイルの複雑で屈折した忠誠心などもいい感じで割り込んでくるし。ユーゼリクスの弟への配慮なんて感動モノなんですよ。なのに読後感がイマイチなのは残念でした。
一応、続編も出てます。似たような感じで進んでいるので、やっぱり好み次第かな。| ハルシフォンの英雄 雨川恵 |





























