大きなタイトルは「凍鉄の花」と「花の如く」のふたつに別れていますが、「凍鉄の花」はそれ自体が土方メインの短編集です。沖田、琴、芹沢との絡みがそれぞれ描かれてます。一番変わっているというか、斬新な解釈が、沖田の二重人格設定です。土方を兄のように慕う沖田と、父の敵と憎悪し狙う沖田。土方の過去と絡めてなかなか説得力のある解釈でした。憎まれて狙われても、沖田の「義」は近藤にあることを理解してくれていた土方。菅野さんの土方は、冷酷で格好良いけど、どこか不器用な土方の為人をよく表現していると思います。男としては素晴らしい生き様ですが、人間としては哀しい。
それでも土方は成功した男の生き方のひとつだと思います。同じような性格なのに、闇に葬られてしまったのが芹沢鴨。両者の違いは紙一重だと思ってます。そんな芹沢は梅に象徴されています。寒空に凜と咲く梅の花を芹沢に喩えるとは、ちょっと贔屓か?でも、芹沢も覚悟した死を無意に活かされた続けた武士という描かれ方なので、これも新解釈なのかもしれません。視点を通説に絞らず描かれた秀作です。
斎藤ファンの私としては、ちょこちょこ彼が出てきたのでそれだけで満足です。ここの斎藤は土方思いの「いいひと」に描かれてます。
「花の如く」はファンサービス的な書き下ろしです。注目するは、隻腕の美剣士・伊庭の登場です。ほんの数コマですが、伊庭ファンの心を鷲掴み。土方が霞んでますよ。
<作品データ>
【タイトル】凍鉄の花
【作者】菅野文
【出版】白泉社
【物語】時は幕末、京でその名を馳せた新選組。それを取り仕切るは「鬼」と呼ばれた男、土方歳三。そして土方を兄のように慕う組随一の剣士・沖田総司。そんな彼の中に潜む土方を増悪する人格。もう一人の沖田が今、目覚める!新たなる新選組烈風伝、ここに登場。

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