新選組といえば、京都での活躍が有名ですが、「北走新選組」はそのタイトルが冠するとおり、晩年の函館時代が舞台になっている短編集です。メインを張るのは、「碧に還る」で野村利三郎、「散る緋」で相馬主計、「殉白」で土方歳三の三人です。いずれも彼らの最期を描いた秀作です。新選組最後の隊長であった相馬はともかく、野村を扱った作品というのは珍しいと思います。隊士に詳しくない人だと、「ソレ誰?」の可能性が高い。でも、野村だって京都時代からの古株です。
「碧に還る」は、野村が女に失敗して意地で切腹しかけたところを土方に救われ、武士として逝った心意気が細かに描き込まれてます。宮古湾会戦は蝦夷方が海軍を失った痛い戦いです。でも、新政府軍にとってはガトリングガンの威力を誇示した場でした。刀から銃へ、そして連発砲へ。時代は確実に武士を古き物としていきました。心意気だけでは勝てないけれど、それでも武士に憧れて新選組に入った若者には、武士として死ぬことが何よりの餞となる。賛否両論のでそうな死に様でした。
「散る緋」は、宮古湾会戦で負傷しながらも生き残り、土方亡き後の新選組隊長を名乗った相馬の切腹に至るまでの心理を描いてます。彼も結局、武士として死ぬことで新選組を終わらすことしかできなかった。完全に男性視点の話しです。でなきゃ、新選組にはならないわけですが。
「殉白」は、土方と大鳥の対照的な人柄をうまく噛み合わせた作品です。常敗将軍の大鳥と軍神の土方。素直すぎる大鳥と照れ屋の土方。どれも二人の噛み合わない場面をうまく捉えてます。噛み合わないからこそ本音が見える。土方の描き方はベタですが、そこに大鳥が入ることで土方の生き方をより明快なものにしていたと思います。
<作品データ>
![]() | 北走新選組 菅野 文 白泉社 2004-09-17 大政奉還を是としない旧幕府の強硬派の中に、かつて京で名を馳せた新選組の姿があった。戦い続ける彼らは北へと転戦し、やがて蝦夷地函館へ至る。義を信じ、義に殉じた新選組隊士達の姿を描いた菅野文渾身の最新作登場! |


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