- 2006年2月19日 23:51
- お猫さま
怪我の功名(?)と我が家の仲間入りした末ですが、実は、この時、もう1匹、入ってきた猫がいます。連れてきたのは、父。「末を入れるんなら、こいつも入れてくれ。」というのが言い分です。
「…こいつって?」
一同怪訝な表情の元、父の足下には黒い成猫が1匹。それが、またなんともニャン相の悪い猫でして、「こんなブサイクな顔みたことない(をい)」というのが正直なところです。けれども、父の言い分にはもっともなところがありました。その黒猫は、野良猫とはいえ、随分前から父のお気に入りで、私たちとも顔馴染みだったからです。
野良猫、それも成猫が人間に懐くのは、よほどのことです。動物好きとはいえ、父は本来、犬派ですから、その黒猫も最初は父を警戒していました。が、毎朝、出勤する父と挨拶(?)を繰り返すうちに、互いに親近感を覚えたとでもいうのでしょうか。次第に父が外で作業(洗車や掃除)する間、傍らでじっとひなたぼっこするようになったのです。そのうち、父が傍にいると、くつろいで寝るまでになりました。
父が帰ってくると、どこからともなく現れ、車庫から家に入るまでついてくる。反対に、玄関の扉が開くと、ちょこんと入り口付近に現れ、車に乗るまでをみつめている。そんなふうに懐かれれば、自然と情が移るでしょう。しかし、我が家には既にクロを筆頭に5匹います。何より、その猫が成猫であるため、クロとの折り合いを考えて、父も家に入れることは考えていなかったようです。
さて、その猫は、雄としては弱いらしく、父が寒いだろうからと置いてやった箱をいつも他の猫に取られるありさま。また、最近、頭の上部に奇妙な堅い異物を発生させ、どことなく元気がなくなっていたため、父なりに心配していたのでしょう。そこへひょっこり現れた末が、怪我をしている子猫だからと、あっさり我が家の住人になったものだから、父としても放っておけないと行動にでたらしい。
「でも、そのコは成猫でしょ?トイレとか大丈夫なの?」
「わしの部屋で面倒みる」
「…『わしの部屋』でねえ…」
でも、昼間は、母の世話になるんだよね。
しかし、末のことがあるから、あまり強く言えないこともあり、うやむやのうちに、もう1匹追加。見た目がダサいのはおいといて、長男の「太郎」をもじって「たろ」と命名。(私たちは密かに『たろいも』と呼んでいたのです。)自分から言った手前、悪戦苦闘の末、父がお風呂に入れて病院へ連れて行きました。
初期検診として、早々に病院へ連れて行って、正解でした。父の危惧していたとおり、たろの頭は寄生虫に犯されていて、放置しておくと余命いくらもない状況だったのです。しかも、この病気は他の猫に移るということで、完治するまでは隔離しなければなりませんでした。いやが上にも「わしの部屋」で面倒を見なければならなくなったわけです。
たろは、野良猫とは思えないほどトイレの躾もあっというまに覚えて、しかも人間の言葉がよく理解できるらしく非常に聞き分けのよい猫でした。「野良でここまで人間に懐くのは、元が飼い猫で捨てられたことがあるからではないのか」というのがもっぱらですが、それを差し引いても、たろは父の言うことをよく聞きます。外にいた時以上に、父べったりなのは言うまでもありません。父が仕事でいないときは、ひとりでポツンと過ごしてますが、あとは金魚の糞のごとくついて回ってる。時には「うずろうしい」と言いながらも、自分に忠実な猫がいることが父には嬉しくてたまらないようです。
それから5年後のクリスマスの日に、たろは大好きな父に看取られて永眠しました。死因は猫エイズ。野良の時に感染していたのだろうということです。発病からわずか半年後の死でした。長く苦しまずにすんだことがせめてもの救いです。

在りし日のたろ。
ベランダで日光浴している時も視線は父を追っていました。
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