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白のフィオレンティーナ

イタリアルネサンスを美術から描いたのが、戸川視友さんの「白のフィオレンティーナ」です。この時代は、チェーザレ・ボルジアにスポットを当てた作品が多いのですが、珍しく彼が出てきません。ただ、彼の妹ルクレツィアがヒロインの成長過程で重要な役割を担って登場します。

物語はヒロイン・フィオレンティーナが白いチョークで聖母を描いているところからスタート。メディチ家縁の豪商アルフォンソと出会い、才能を認められて画家の見習い小僧フィオレンティーノの誕生です。そう、女が駄目なら、まず、男からというわけです。女であることを知っているもの好きなお師匠さまが、なんとラファエロ!そのほかに、ミケランジェロも喧嘩友達っぽく付き合いが始まります。それだけではありません。アルフォンソの仕事の都合でイタリア各地を回ることになったフィオレンティーナは行く先々で有名な画家たちと関わりをもつことになるのです。最初は反感を持たれていたフィオレンティーナが最後には受け入れられていく。彼女の素直さは絵に現れ、真を見る者にはちゃんと伝わっていくのですね。芸術家のプライドも垣間見れて受け入れ方も様々で面白いです。

画家としての成長を描く一方で、アルフォンソへの想いを募らせていくフィオレンティーナのいじらしい姿は対照的に描かれています。アルフォンソの恋敵にハスプブルク王家のカール5世というあたりが憎い演出です。メディチ家復興が絡んできたあたりから、ローマ教皇ユリウス2世も登場。フィオレンティーナの側にいられなくなったアルフォンソに代わって彼の兄である枢機卿ジョヴァンニが加わって、彼女の回りは一見、華やいでいきます。

フィオレンティーナの画家としての成長と、恋の成就と、歴史的融合。最後まで飽きさせぬ展開で、イタリアルネッサンスが味わえます。歴史的融合は、それぞれのエピソードの終わりで明らかにされ、女流画家フィオレンティーナの位置づけも最後の最後で説明されます。個人的には、最終回のこの部分は必要ないような気がしますが、リアル性を持たせたかったのではないかと思います。いずれにしても、フィオレンティーナは「再生=ルネサンス」に相応しい生き方をした女性でした。

さて、ジョヴァンニは枢機卿から教皇レオ10世になりますが、その絡みで押さえておきたいのは、さいとうちほさんの「「花冠のマドンナ 」(全4巻)です。こちらはメディチではなくチェーザレ色が強く出ています。そしてレオ10世の意外なる解釈ぶりは、「白のフィオレンティーナ」以上といえるでしょう。だけど、そういうのもアリかな、と思わせてくれる展開なのです。突っ込みたい人には突っ込めるレオ10世の為人です。それに対して、里中満智子さんの「ラファエロ―その愛」(中公文庫コミック版)は、ラファエロにスポットを当てた正統な物語。「白のフィオレンティーナ」に出てくるラファエロしか知らない人には、ある意味の驚きを与えるかも知れませんが、本来はこういう人なんですよ、たぶん。


<作品データ>
【タイトル】白のフィオレンティーナ
【作者】戸川視友
【出版】冬水社 いちラキコミックス 全23巻
【物語】16世紀初頭。ミケランジェロ、ラファエロなどルネサンスの天才画人達が集うフィレンツェの都。女が画家という職業を選択できなかった時代に、画家になることを夢みる、1人の貧しい少女がいた。彼女の名はフィオレンティーナ。両親は変わり者の娘に絶望し、彼女に知らせず嫁ぎ先を決めてしまう。絵を描く道を断たれたフィオレンティーナは川に身を投げるが、すんでの所を貿易商アルフォンソに救われる。それはフィオレンティーナの人生を180度変える、運命の出会いだった。(第1巻より)

【参考】
時代背景、特に主人公達に関わりの深いメディチ家の主立った人物の概略を知るに手頃な本.。どちらも専門的に深く知りたい人にはもの足らないと思いますが、「白のフィオレンティーナ」に関係ある人達とその背景を知るには便利です。
メディチ家の人びと―ルネサンスの栄光と頽廃/中田耕治(講談社学術文庫)
図説 メディチ家―古都フィレンツェと栄光の「王朝」/中嶋浩郎(河出書房新社)

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