- 2005年2月 8日 18:49
- 枕元に一冊
高松凌雲を知ったのは、時代劇スペシャル「五稜郭」で風間杜夫が演じているのを見てからです。彼の演じるインテリ風の医者が武士に見えて、でも、松本良順とはタイプが違う?主人公そっちのけで興味を惹かれました。
慶応三年、万国博覧会に出席する徳川昭武の随行医として渡欧した三十一歳の医師・高松凌雲。パリの医学校「神の館」で神聖なる医学の精神を学んだ彼は、幕府瓦解後の日本に戻り、旧幕臣として函館戦争に身を投じる。壮絶な戦場において敵味方の区別なく治療を行った、博愛と義の人の生涯を描く歴史長編。
本書の大半は、函館戦争における高松凌雲の活動ぶりを描いています。医者として赴きながらも当時の医療制度の習わしに阻まれ思うような活動ができなかった苦痛。函館病院の頭取に乞われた時、そこを明らかにして対応してからでないと引き受けなかった頑固さ。命をかけて患者を守った勇気。官軍とのやり取りは、非常に緊迫するけれど、そこに医者としてのあり方の本文を見たように思いました。ここは時代劇ドラマでもしっかり描かれているシーンなので、すっと入ってきた感じ。
その彼を作り上げた土台がパリで学んだ日々です。あとがきにも書かれているけど、この渡欧なくして函館戦争に身を投じた高松凌雲はありえない。博愛とひとことでは片付けられない重みのある経験を得ていました。幕末から明治初期の留学は、日本の歴史に大きな影響を与えたのだと感じます。
高松凌雲は義を忘れない人でした。そのことが彼を知識は貪欲にしながらも富や名誉には無欲に至らしめたと思います。勉強したくて養子先を出奔するなんて、当時としてはすごく思い切った身の振り方ですよ。しかも兄弟が同じ道を選んでるとは!それを黙って見逃した実父も肝の据わった人です。さて、当人は忙しい医者だから晩婚。でも、子だくさん。兄の非業の死や弟の埋没された人生に比べると幸せな一生でした。
![]() | 夜明けの雷鳴―医師高松凌雲 吉村 昭 文芸春秋 2000-01 |




