- 2005年2月 8日 18:27
- 枕元に一冊
新選組で明治時代を生き抜いた「斉藤一」を追いかけて巡り会ったのが秋山香乃さんの「獅子の棲む国」です。秋山香乃さんといえば、土方歳三を描いた「歳三往きてまた」が有名ですが、ここでは会津の山川大蔵にスポットを当てています。
敗れし者の明治維新。
烽火を上げるのは、若き軍事天才・山川大蔵。西南戦争で、仇敵薩=西郷軍を撃破し、新星日本のヒーローとなる。若き会津群像魂解放の開始だ! 会津人の再生ドラマを描く。
物語は落城寸前の鶴ヶ城からスタート。のちに初の女子留学生となる山川の妹咲子(改名・捨松)も弾拾いでちらりと姿を現します。ここから始まったのは、山川が獅子舞に扮して劇的な入城を果たしたシーンが彼の登場を兼ねているからです。天才山川の名を読者にも知らしめる、ドキドキワクワクの演出でした。ものすごく緊迫した場面なのに、彼の登場でがらりと雰囲気が変わります。山川の存在感のすごさを実感しました。
官軍に降伏してからの日々は、会津にとって地獄の試練。山川にとっても辛い日々です。会津藩がなくなっても「会津」とさげすまされる。それでも、後進のために歯を食いしばって陸軍に出仕した彼の反骨精神にはただ頭が下がるのみです。
山川大蔵から山川浩へ改名した行も印象的です。孟子の一節「我善く吾浩然の気を養う」から取った「浩」には、藩の犠牲となった人の人生も背負う覚悟がありました。獅子に相応しい改名場面です。
さて、私がお目当ての「彼」は基本的に斉藤で表現されていて、神出鬼没、いつのまにやら山川の側に控えてます。人間らしいやり取りがふたりの間にあって、嫁取り話では不謹慎にも吹き出してしまいました。その後の「付き合いますよ」「頼もしいな」へと続く関係の深さが推し量られます。
時間軸は会津陥落から西南戦争の終焉までの約9年です。その間にどれほどの忍耐と葛藤があったのか。明治の要人たちにも触れつつ、たいへん濃い足取りを追わせていただきました。
![]() | 獅子の棲む国 秋山香乃 文芸社 2002-11 |




